(32)納豆菌は国内最古のプロバイオティクス

 ご存知の通り、納豆は大豆に納豆菌を付着して発酵させた食品です。スーパーなどで買えるほぼすべての納豆は、樹脂製パック詰めですが、昔は稲わらでできた藁苞(わらづと)でくるまれた商品が豆腐店で売られていました。



 納豆菌は自然界に広く分布する枯草菌(こそうきん)「バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)」の変種です。枯草菌は、雑草地の枯れた草から多く分離されるため枯草菌という名前が付けられています。枯草菌の仲間は、芽胞と呼ばれる殻を作るのが特徴です。芽胞は熱や乾燥に強いため、芽胞を持たない細菌は乾燥や熱で死んでしまいますが、納豆菌は天日干しや沸騰したお湯の中でも耐えることができます。この性質を利用して稲わらを蒸すことで他の微生物を殺菌し、納豆菌だけをイネに残して煮た大豆を発行させてできたのが納豆です。納豆菌は非常にしぶといので他の発酵食品の工場では天敵とされています。清酒の材料であるお米を納豆菌がダメにしてしまうため、仕込みの前には納豆を食べない職人や、酒蔵見学の際に前日から納豆を食べないよう注意しているところもあるようです。


 稲には必ずしも納豆菌だけが付着しているわけではなく、他の微生物やただの枯草菌もその中に含まれているため、微生物学が発達する前(明治以前)までは腐敗して納豆にならないこともあり、安定供給できず今ほどメジャーな食品ではありませんでした。現在のパック詰め納豆は、安定供給するために純粋培養で増やした納豆菌を蒸した大豆に混ぜてパック内で発酵させて作られています。納豆のパックに穴が開いているのは、発酵の際に納豆菌が呼吸するためです。稲わらをつかった納豆は限られたメーカーが販売していますが、納豆菌を混ぜた大豆を滅菌した藁に包んだ包装になっています。



 国産の納豆のほとんどは、国内三大納豆菌種とも呼ばれている「宮城野菌」、「成瀬菌」、「高橋菌」の3種類が使われています。これらの納豆菌の由来は古く、明治45年に納豆から分離された菌株の派生です。においの少ない納豆などメーカーが独自に選抜した菌株を製品に合わせて使うこともあります。

 納豆菌は人体に良い影響を与える善玉菌(プロバイオティクス)で、納豆を食べることで腸内環境を改善する働きがあります。ヨーグルトなど他のプロバイオティクス食品と同様に1度食べただけで腸内環境が改善されるわけではありません。また、1日1パックから2パックまでが適量のようです。納豆菌と乳酸菌の相性がとても良いことが判っていますので、合わせて採ると良いでしょう。


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(2016.9.16更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は9月30日(金)を予定しています。

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