(24)身近な黒いカビの正体 〜似て非なる黒色カビのグループ〜

 16日に沖縄が梅雨入りし、全国的には平年並みの梅雨入り予報が出ています。6〜7月にかけての長雨をつゆ=梅雨(ばいう)と呼びますが、これは梅の実が熟す時期に降る雨であることからつけられたとされています。また、異なる語源もあり、黴(カビ)の生えやすい時期の雨から黴雨(ばいう)と呼ばれ、それが同じ読みの梅(バイ)に転じたともいわれています。


 梅雨から夏季にかけての多湿な時期に住宅内で最も多く目にするカビは風呂場の目地、洗面所、シンクの下、床下収納庫などに生える黒色のカビではないでしょうか。カビは菌糸と胞子からなる微生物です。一見カビ集落の色が同じように見える黒色のカビですが複数の異なるグループが存在します。



 一般的な住宅で見られる代表的な黒色のカビは、クロカビ(クラドスポリウム属;Cladosporium属)です。空気中に浮遊するカビ胞子の20〜50%を占め、住宅の水回りに最も多く発生し、他にも食品や木材、皮革、繊維、包装材など様々な材質を汚染します。クロカビの中にはアルミニウム合金を腐食させる種類も存在し、ジェット機の燃料タンクの底 に穴を開けることもあります。風呂場の目地に生えてしまうと、シリコン系の材質の奥深くまで菌糸伸ばしてしまうために、外側から殺菌することが難しく、殺菌した後も黒く跡が残りやすくなります。


 繊維を侵す黒色のカビもいます。衣類やカーテンなどが黒っぽく変色した場合には、ススカビ(アルテルナリア属;Alternaria属)の繁殖が考えられます。ススカビは一般的なカビ対策と同じく、消毒用エタノールや塩素系漂白剤で殺菌できますが、繊維の内部にまで入り込んでしまうと、洗濯でも落ちにくくなってしまいます。また、食品や建材に粉状の黒いカビが生えた場合には、クロコウジカビ(アスペルギルス・ニガー;Aspergillus niger)である可能性が 高く、風呂場やシンクの排水口にできる黒いヌメリの中には黒色酵母様菌(オーレオバシディウム属;Aureobasidium属)が含まれていることが多々あります。


 洗濯槽の裏側で発生することで一躍有名になった海苔のようなカビは、エクソフィアラ属(Exophiala属)やフィアロフォラ属(Phialophora属)である可能性が高く、洗濯後の衣類に黒い破片が付着して見た目が不快なだけでなく、においの原因にもなります。洗濯槽の裏側にエタノールや塩素系漂白剤を使うのは難しいので、日常からカビの繁殖を防止することが望ましいです。


 いずれも梅雨時期に、放置すると急激に空気中のカビ胞子が増え、アレルギー症状に繋がることもあるので注意が必要です。
 予防対策で一番大切なことは水分の除去と乾燥です。黒色のカビは、高湿度を好み、常に水分がある場所で繁殖します。風呂場の壁、洗面台、シンク回りなどは寝る前に極力水滴を拭き取りましょう。その上で、換気扇を朝まで回して乾燥させましょう。換気扇だけでは不十分な場合には、扇風機やサーキュレーター(空気循環器)を併用することでより早く乾かすことができます。洗濯機は普段からふたを開けておくといいでしょう。

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(2016.5.27更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は6月10日(金)を予定しています。

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