フジテレビ商品研究所

商品研究レポート

掃除機で吸いこんだPM2.5は
掃除機内を通過し排出しないか?

掃除機で吸いこんだPM2.5は掃除機内を通過し排出しないか?

 昨年あたりから微小粒子状物質「PM2.5」がよく話題にのぼります。PM2.5は、大気中に浮遊する粒子状物質のうち、直径2.5μm(0.0025mm)以下の物質の総称です。土や火山等の自然界にも存在している物質ですが、石炭や石油の燃焼といった人為起源による大気汚染物質の中にも含まれ、最近では中国での大量発生が深刻化し、日本への飛来が問題視されています。PM2.5の直径は花粉の10分の1程度と非常に小さいため、肺の奥深くまで入り、健康被害を受けやすく注意が必要です。
 屋外からPM2.5が室内に侵入したと仮定して、掃除機で吸引した場合、PM2.5が掃除機内を通過し排出されてしまうと、結果的に室内のPM2.5は除去できず、汚れた空気を吸い込んでしまう恐れがあります。
 そこで、紙パック式2機種とサイクロン式3機種の掃除機の排気に含まれるPM2.5の濃度を比較してみました。使用したのはいずれもPM2.5問題が話題にのぼる前に発売された2010年製造の掃除機を中心としました。



試験試料

 表1に試験した紙パック式2機種とサイクロン式3機種の掃除機の仕様一覧を示します。

表1:試験に用いた掃除機の仕様一覧

 なお、紙パック式の2機種に使用した紙パックは、それぞれメーカーの純正品で標準的なタイプを新品で使用しました(写真1、2)。

写真1:Panasonic 紙パック式に使用 写真2:東芝 紙パック式に使用

試験方法

 PM2.5のモデルにはJISで規格された試験用粉体「関東ローム」という土を使用しました。この土の粒径が主に1〜2μmであることからこの土を選びました(写真3)。6畳の密閉された部屋で、フローリング床を想定した化粧板に関東ローム10gを18cm×90cmの範囲にふるいで均等にまき、対象とする吸引物質としました。掃除機の運転モードは排気量が最も多いと思われる「強」モードにて試験をしました。吸引の際は、掃除機本体を固定し、吸引ヘッドだけを1方向に動かし1分間かけて土を完全に吸引しました。吸引後もそのまま電源を切らずに運転状態で3分間、さらに電源を切ってから1分間の合計5分間をPM2.5専用測定機で測定しました。なお、大人が掃除機をかけるときの口・鼻の高さを想定し、床から135cmの高さに測定機の吸気口がくるように設置しました。

写真3:PM2.5モデルとした試験用紛体

紙パック式の掃除機はPM2.5を排出しやすい

図1:床から135cmの高さでの実測結果

 図1より、サイクロン式は紙パック式に比べてPM2.5排出濃度が低いという結果でした。今回試験を行ったサイクロン式の全てが日本の環境基準「1日の平均濃度が1立方メートルあたり35μg」の範囲内であり、全く問題が無いレベルであることが分かりました。一方、紙パック式はサイクロン式よりもPM2.5の濃度が高い傾向にありました。

 各掃除機の吸込仕事率という掃除機の空気を吸い込む能力(ゴミを吸い込む能力ではありません)に注目してみると、紙パック式のものが630Wと530Wといずれもサイクロン式より2割から4割程度高い数値となっています。空気を吸い込む能力が高い紙パック式は排気量も多いため、その分PM2.5を排出しやすくなっていると考えられます。同じ紙パック式で比較してもPanasonicと東芝では吸込仕事率が高いPanasonicのほうがPM2.5の濃度が高いことからも、吸込仕事率の違いがPM2.5の排出に影響していると考えられます。
 さらにDysonの掃除機の吸込仕事率は公表されていませんでしたが、家電通販サイトや家電評価サイトなどで確認した限りでは210Wとなっていました。Dysonがサイクロン式の掃除機の中で最もPM2.5濃度が低いのは最も低い吸込仕事率であるためだと思われます。
 このように、PM2.5の排出量の違いは、集じん方式の違いだけではなく、吸込仕事率の違い、つまり数値が高いほどPM2.5の濃度は高くなるというように吸込仕事率が大きく関係することが分かりました。

写真4:紙パック式掃除機の紙パック周辺の様子

 試験後に紙パック式の掃除機のカバーを開けてみると、紙パックの表面やその周辺に関東ロームの土が付着していました(写真4)。紙パックの細かい目よりもPM2.5の粒径が小さいため洩れてしまいまわりに吹き出してしまったと思われます。
 また、各メーカーは今回試験で使用した標準タイプの紙パック以外にも高捕じんタイプの紙パックも販売しているので、それらに変えることでPM2.5の排出量を減らせると思います。

高低差で濃度が違うPM2.5

 次に床から70㎝の高さに測定機の吸気口がくるように設置して同様の試験を行ってみました。この高さは子供を想定しています(写真5)。

写真5:高さ70cmでの試験の様子

図2:床から70cmの他kさでの実測結果

 高さ70cmでは135cmのときと比べ、PM2.5濃度が高かった紙パック式は低い傾向となり、サイクロン式でもさらに低くなりました。PM2.5は微小粒子のため軽く、排気によって舞い上がると煙のように部屋の中に広がって、なかなか落ちてこないからだと考えられます。また、今回は 測定していませんが、天井や壁にも吸着することも考えられます。

掃除機を使う際に注意すべきポイント

 サイクロン式の掃除機であれば少し前に購入されたものでも、排気に含まれるPM2.5の濃度は環境基準以下でした。サイクロン式の掃除機は普通に使う分には問題ありませんが、たまったゴミを捨てる際はPM2.5を含む粉塵が飛散するおそれがあるのでマスクを着用し、屋外で行うなどの注意が必要です。
 紙パック式の掃除機では、床から70cmの高さでは環境基準近くまでPM2.5の濃度は低くなりました。そうなると小さなお子様への影響はそれほど気にすることはないかもしれませんが、大人が使用することも考慮してPM2.5に対応した空気清浄機やマスクなどを併用することをお薦めします。紙パックの交換時はマスクの着用と屋外での実施は必須です。
 なお、今回のテストでは掃除機の排気口付近を測っていません。排気口付近のPM2.5の濃度は高いと思われますので、排気が直接あたるような場所には近づかないようにすることが大切です。

(2014.04.04 生活科学研究室)

▲PageTop