研究員オダの環境レポート
Vol.5 マダニが媒介するウイルスの危険性
<2014.05.12 更新>

 今回はマダニが媒介するヒト感染性のウイルス(重症熱性血小板減少症候群;SFTSウイルス)についてお話ししたいと思います。このウイルスは発症した場合の治療法が無く死亡例も出ていることから、昨年、紙面やニュースで大々的に取り上げられました。その報道を覚えている方もいらっしゃるかと思います。

■ マダニとは
 私たちが研究対象としているダニは一般住宅の室内環境に普通に生息し、主にアレルギーを起こすダニです。これに対して、マダニは野外に生息していて、動物を吸血するダニです。5月に入り暖かくなったことで、さまざまな生き物が活発化します。マダニも例外ではありません。そのため、草むらなどに入るとダニに噛まれ、不運な場合は病原体が伝播されることがあります。

■ 最近発生したウイルスではない?
 SFTSウイルスは、2011年の中国で見つかり、日本国内では昨年に患者が報告されました。ところが、過去の原因不明患者を遡って調査したところ、中国では2006年、国内では2010年に、原因不明患者としてSFTS感染患者が報告されていることが判明しました。また、ウイルスの遺伝子が中国と日本で少し違うため、中国から流入してきた可能性は低いことが分かっています。これらのことから、SFTSウイルスは急速に分布を拡大しているわけではなく、従来から存在していたと考えられます。

■ ウイルス保持マダニは少ない?
 SFTSウイルスを保持したマダニは国内全域に分布していることが明らかになっています。しかし、「環境中に生息するマダニの中にどの程度SFTSウイルスを保持するマダニが存在するのか」については明らかになっていません。
中国で行われた調査では、ウイルスを保持するマダニは数%程度との調査結果があります。日本においても、これまでの患者数が少ないことからウイルス保持マダニの個体数は中国と大きく変わらないと推察されます。

■ 致死率は高くない?
 SFTSウイルスが報告された当初は、感染後の致死率が約30%と言われていましたが、その後の調査で6%程度であると考えられています。では、なぜ発見当初の致死率が高かったのでしょうか。これは、重篤な患者は病院で受信するため感染が明るみに出ますが、症状が軽い場合には患者が病院に行かないため報告されないことが原因です。そのために、本格的な感染患者の調査が行われるまでは重症患者が多くなる傾向にあり、致死率が高くなってしまうのです。

 いかがでいたか?今まで考えていた印象と大きく変わった方も多いと思います。ニュースではセンセーショナルな話題として危険な部分に注目して取り上げますが、実態は異なるといったことが起こります。私も当研究室で勉強するまでは危険なウイルスであると思っていました。
 ただし、マダニを含めた吸血性のダニはSFTSウイルス以外にもさまざまな病原体を媒介しますので、まったくの無害というわけでもありません。野外でダニに刺されたと思ったら、病院で診察を受けることをお勧めします。

 
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このコラムについて エフシージー総合研究所・IPM研究室の活動内容や、研究中の内容をスタッフ目線でレポートした記事です。一般のかた向けに分かりやすく解説しています。
IPM研究室とは エフシージー総合研究所・暮らしの科学部所属。室内環境の有害物質を調査・研究しています。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主仕事としています。
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