起業志望者集う交流スペースの“チーママ”

三菱地所(下)

新型コロナは世界を劇的に変えた。衝撃は大きく、コロナ前に戻る意思さえ吹き飛ばした。逆にそれは、「新たな扉」が開いたことでもある。会社はどう生き抜いていくのか。その「カタチ」を模索してみる。

産業経済新聞社・夕刊フジ
コーナー 「コロナが変えた会社のカタチ」
取材先 三菱地所 エリアマネジメント企画部兼DX推進部副主事
橋本沙知氏
新聞発行日 2021年5月13日(木)

夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ

【プロフィール】
はしもと・さち
2012年一橋大卒、三菱地所入社。三菱地所レジデンス出向。都心エリアの分譲マンション営業を担当。17年人事部。人事制度改革などを担当し、20年から現職。「人見知り」と自己分析するが、セミナー「新しい働き方改革」で、パネリストとして積極的に意見を述べるなど、前向きな姿勢に社内外からの評価は高い。31歳。

【三菱地所】
大手町、丸の内、有楽町に30棟以上のビルを保有。6月末、東京駅前常盤橋プロジェクト「TОKYO TОRCH(トウキョウトーチ)」街区に、「常盤橋タワー」(A棟)が竣工予定。それに先駆け、企業広告「三菱地所と次にいこう。」を展開中。「Torch Tower」(B棟)は27年度竣工予定。執行役社長/吉田淳一。


夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ
コロナ前、ステージでのプレゼンテーション

 東京の再開発計画がコロナ禍の今も、めじろおしだ。2002年に都市再生特別措置法が制定されて以降、都市の再生を目指す数々のプロジェクトが進められ、人々が働く場もさまざまな変化が起きている。
 120年以上にわたり東京・丸の内エリア(大手町、丸の内、有楽町)の開発を手がけてきた三菱地所。2020年以降のまちづくり計画「丸の内NEXTステージ」で、重点エリアの1つとして挙げているのが「有楽町」だ。

 ハード面を整備するだけでなく、「既存ビルも活用したソフト面の取り組みも積極的に行っている」と、広報部の橋本知さん。昨年7月、「ポスト・コロナ時代のまちづくり」を発表。丸の内周辺エリアを「就業者28万人が毎日8時間×週5日過ごす場」から「多様な就業者100万人が最適な時間に集まり、交流して価値を生み出す舞台」に方向転換した。
 有楽町は、大企業が多い丸の内や金融のイメージが強い大手町に比べて、人や企業の多様性があるまちだ。そんな層に「新たな出会いで刺激を受け、仕事に生かしたい」と思ってもらえるようなプロジェクトを再開発に先駆けスタートさせた。

 その1つが会員制ワーキングコミュニティ「SAAI(サイ)」。有楽町周辺に勤務するイントレプレナー(社内起業家)やその候補者などを対象とし、個人がアイデアを出し合い、磨き、事業化していく過程までをサポートする。
 JR有楽町駅前の新有楽町ビル10階の「SAAI」(約1000平方㍍)には、ワークスペースや交流スペース、プレゼン用ステージ、イベントができる和室などがある。会員交流のためのバーで、会員相互の交流を促し、施設の活性化を図る「チーママ」を務めるのがエリアマネジメント企画部兼DX推進部副主事の橋本沙知さん=顔写真。

 昨年、出社率が約5割となり、リモートワークが続いて人との接点が減り、情報も思うように入らなくなった。「仕事上、またプライベートでも日々のコミュニケーションがいかに重要であるかを痛感しました」
 職場の先輩に相談したところ、「SAAI」での「チーママ」を勧められた。将来、飲食店を開きたいという夢もあり、起業家を目指す人たちとの交流は願ってもないことだった。

 持ち前の明るさと、人の輪作りが上手な人柄を生かし、「チーママ」として、新規会員の紹介から意見交換の調整など八面六臂(ろっぴ)の活躍ぶりだ。会員は約270人。航空会社や商社の管理職もいれば、会社の経営者もいる。まさに生きた情報が飛び交う貴重な情報交換の場だ(バーは現在、休業中)。
 「SAAI」での活動は、午後7時ごろから。職場の仲間が「行ってらっしゃい」と快く送り出してくれることが、「チーママ」としての自信に繋がり、現業でもさまざまな面で生きている。   


(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子 2021.5.28 掲載)

【やまもと・ひろこ】
早大卒。40年以上にわたり、企業や自治体、大学の危機管理と広報活動について取材。コンサルティング活動も行ってきた。取材件数は延べ2000社以上にのぼる。経営情報学修士(MBA)

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