沿線顧客いかに増やすか 通勤と観光6つの魅力

西武鉄道

新型コロナは世界を劇的に変えた。衝撃は大きく、コロナ前に戻る意思さえ吹き飛ばした。逆にそれは、「新たな扉」が開いたことでもある。会社はどう生き抜いていくのか。その「カタチ」を模索してみる。

産業経済新聞社・夕刊フジ
コーナー 「コロナが変えた会社のカタチ」
取材先 西武鉄道 鉄道本部計画管理部管理課課長補佐
渡邉奈緒氏
新聞発行日 2021年2月18日(木)

夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ

【プロフィール】
わたなべ・なお
2007年同志社大卒、西武鉄道入社。現場で駅係員、車掌、運転士を担当後、運輸部本社に配属。13年鉄道本部計画管理部計画課主任。18年から現職。実家のある兵庫県で発生したJR福知山線脱線事故を機に、安心・安全な列車の運行と地域の街づくりに携りたいと西武鉄道に入社した。36歳。

【西武鉄道】
2012年、前身の武蔵野鉄道創立100周年を迎えた。西武グループの中核として、「安全・安心」を基本に西武新宿線連続立体交差事業、ホームドアの設置、新型車両の導入など利便性の向上や快適なサービスの提供に努めている。近年は、「人と環境にやさしい鉄道」を目指してバリアフリー施設の充実、環境に配慮した施設や車両の導入を推進。1日の平均輸送人員は181万人(2019年度)。代表取締役社長/喜多村樹美男。


夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ
学生たちとの意見交換会(2019年8月)

 首都圏の緊急事態宣言再発令に伴う終電繰り上げが1月20日から始まった。新型コロナウイルス感染拡大から1年が過ぎた。鉄道各社では「3密」を避けるため、車内放送で在宅勤務や時差出勤・通学を呼びかけ、車内や駅などの消毒に取り組む。社員のウイルス感染を防ぐためにマスク着用、手洗い、うがい、出勤前の体調確認なども徹底してきた。

 東京都・埼玉県に路線を持つ大手私鉄の西武鉄道が目指したのは“スピード感”。車内では時差通勤や換気の呼びかけ、ホーム待合室や改札付近のオープンカウンター、特急券・定期券などの発売所では自動ドアの開放を行い、利用者同士の間隔確保、空気の循環に配慮してきた。駅構内での消毒液の設置や、券売機や車中で利用者がよく触れるつり革や手すりなどの消毒作業も各駅や車両基地で実施している。
 埼玉県・所沢の本社では在宅勤務などを活用しながら、状況に応じて出社率を3~5割で調整している。現場は利用客の安全を確保するために人員を大きく削減できないという問題があり、可能な範囲で1日当たりの出番者を減らした。

 鉄道本部計画管理部管理課課長補佐の渡邉奈緒さん=写真=は、定期旅客を増やすための各種施策を企画する業務を担っている。
 在宅勤務が推奨され、通勤・通学客が減少している中での定期旅客増は厳しいが、コーポレートメッセージ「あれも、これも、かなう。西武鉄道」の実現を目指し、沿線に住む顧客をいかに増やすかに全力投球している。
 特設ウェブページ「すもうよ!西武線沿線」を開設し、のびやかな教育環境を叶えることができ、通勤路線と観光路線であることなど6つの魅力を紹介。「西武線沿線に住んでみませんか?」と呼びかける。

 昨年9月、西武池袋線と西武新宿線が交差し、都心へのアクセスも30分前後という利便性の高い所沢駅に大型商業施設「グランエミオ」がグランドオープン。通勤・通学、日々の買い物など生活が一層便利になったことも、暮らしやすいエリアとして見直され同社にとって追い風となっている。
 沿線随一の学生街で取り組む「江古田キャンバスプロジェクト」(2019年スタート)ではオンライン授業により大学生の通学機会が減少する中、学生や街の人とともに「江古田に元気を取り戻そう!」と題した意見交換を実施。今月末には江古田駅に学生たちがデザインした作品が並ぶ。街を知り、好きになることが定住につながるというのが渡邉さんたちの思いだ。

 3歳と5歳の子供を育てながらの勤務は1日が早い。在宅勤務の時はオンラインで情報交換しているが、子供と過ごす時間が増え「自分が穏やかになったような気がする」と自己分析する。
 外出機会の減少を機に、「ウェブ解析士」の資格を取得。「利用者の声の分析などにも利用できると思って」と何事にも前向きだ。


(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子 2020.11.11 掲載)

【やまもと・ひろこ】
早大卒。40年以上にわたり、企業や自治体、大学の危機管理と広報活動について取材。コンサルティング活動も行ってきた。取材件数は延べ2000社以上にのぼる。経営情報学修士(MBA)

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