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小林製薬
消臭剤「無香空間™」

2020.07.27

最新記事香りでごまかさずピンポイント除去

 新型コロナウィルスへの対応でほとんどの人が、自宅で過ごすことを余儀なくされた。外出自粛の緩和後も政府の推奨する「新しい生活様式」の実践として在宅勤務を続ける人も多いのではないか。今回の「これは優れモノ」は、室内で快適に過ごすための消臭剤を取材した。

無香空間

サワデーから市場牽引

 「香りでごまかすのではなく、ニオイをしっかり消臭するというのがコンセプトです」と話すのは、小林製薬日用品事業部で消臭剤「無香空間」のブランドマネージャーを務める山下直子さん。これまでは、「あずきのチカラ」や「足の冷えない不思議な靴下」といった温熱製品の開発を主に担当してきたが、1年半前から「無香空間」を手掛けている。
 同社は1975年に日本初のトイレ用芳香剤の「サワデー」を発売し、一般家庭に芳香消臭剤を広める牽引車の役割を果たした。以後現在に至るまで、同社はほぼ半世紀にわたり芳香消臭剤市場でトップの地位にある。
 サワデーが登場した当時は、香りを楽しむというよりも、香りは嫌な臭いを嗅ぐのを防ぐための素材として使われていた。このあたりは、中世以降のヨーロッパで香水が愛用されていたのと相通じるものがある。
 当初はトイレ用として登場した芳香消臭剤だったが、分譲マンションの普及など、住宅環境の変化に伴い、室内用、ペット用、タコ用など使用用途に応じた商品群が各社から発売され、市場は拡大していった。
 芳香消臭剤の香りは、商品の肝と言ってもいい。同社の調査によると、時代とともに好まれる香りは変化しているという。1980年はローズ、きんもくせいなどのフローラル系の香りが圧倒的な人気だった。以後、フローラル系に加え、シトラス系、フルーツ系、せっけん系の香りなどさまざまな香りが登場している。
 また、芳香消臭剤は、トイレ用など香りで嫌なにおいを消すために使われる場合と室内用として香り自体を楽しむ目的とにニーズが分かれるという。
 「しっかり香るこそが芳香消臭剤に求められていた機能でした」と山下さんは、消費者の使用実感が得られるためには香りが欠かせないと社内的に考えられていたと話す。

社内の反対意見押し切る

 同社では75年の「サワデー」発売以来、香りの好みなどについての消費者調査を定期的に行っている。その調査の過程で、90年代に入ると香りが一切しないことを良しとする層が少なからずいることが判明した。
 「全体としては10%程度でニッチ市場でしたが、開発担当者は有望と考えました」。山下さんによると、香りの無い消臭剤は売れないとの反対意見が上層部や営業部隊から寄せられたという。
 そんな中、開発者が無香料の試作品を嫌な臭いがする自動車のトランクに入れたところ、すっかり匂いがとれていることを実感。必ず確かなニーズがあるとして、反対意見を押し切った。
 香りで臭いをごまかすのではなく、悪臭だけをピンポイントで取り除くという高いハードルをクリアして95年に誕生した”優れモノ”が「無香空間™」だ。「一般家庭にとどまらず、業務用にも使われている消臭剤のパイオニア的商品です」と山下さんは品質の確かさを語った。

interview 小林製薬
日用品事業部ブランドマネージャー   山下 直子 氏

嫌な臭いだけ取り、いい匂いは残す

発売25周年を迎える

 社内では反対の意見が多かったが、1995年の発売後わすが4カ月で年間の売り上げ目標の3億円を突破した。嫌な臭いだけをとるという消臭マーケットを築いた先駆的商品だと自負している。ペットブームや気密性の高い住宅の普及、日中に人のいない共働き家庭の増加なども追い風となったと思う。

技術的にも高いハードルがあった

 消臭で一般的なのは、香りで臭いを包んでしまうというマスキング手法と呼ばれるものだ。この手法は、消臭効果もあるが、消しきれない悪臭もある。香りでごまかすといった側面もある。「無香空間」は、悪臭を消し、いい匂いは残すという消臭成分を徹底的に研究して生まれたものだ。そのため、使う場所を選ばず、悪臭のある場所ならどこでも効果を発揮することとなった。

容器や見た目にもこだわりが

 容器自体は、温度計や湿度計を入れておく気象観測用の百葉箱を参考にした。通風が良く、消臭成分が効率よく空気と触れることができるよう工夫。中身の消臭液を保持する吸収体として透明なビーズを採用している。どこにおいてもなじむように見た目にも気を配った。消臭効果はレギュラーサイズで2カ月、特大サイズで4ヵ月、超特大サイズでは半年程度持続する。靴箱の中や、キッチンのシンク下など、ニオイの発生源の近くで、よどんだニオイを感じるところに置くことをお勧めしている。。

芳香消臭剤市場の現状などは

 部屋、トイレ、車用などを含むと2019年で650億円ほどの市場規模だ。無香の消臭剤は50億円ほどの規模といわれ、その半分を弊社の「無香空間」が占めている。一般家庭ではトイレ、リビング、キッチンなど悪臭が発生するあらゆる場所で使われている。病院や介護施設などでも幅広く使われている。また、ホテルやカーシェアリングなどでは、ミスト状の無香空間が使われている。無香空間で培った消臭に関する知見を活かし、業務用の商材などにも力を入れている。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ