(43)住環境の微生物アレルゲンの問題 

 これまで、発酵食品を作るために欠かせない有用微生物や疾病を引き起こす病原微生物、室内の害虫やダニなど、私たちの暮らしに関わりが深い微生物たちを紹介してきました。微生物は私たちが生きていく上で無視できない存在でもありますが、微生物は肉眼で見ることができないため、多くの方がその存在に気がついていません。実際、腸内細菌や皮膚の常在菌がいなければ、我々は生きてはいけません。


 最終回では、住環境の微生物アレルゲンについて警鐘を鳴らしたいと思います。私たちが一日の生活する環境はほぼ室内であり、その大半が住宅です。近年、日本の住宅は高断熱高気密の形態に移行したことにより、室内の換気回数が減少しました。窓を閉め切った状態で、室内空気が希釈されながら自然に1時間あたり何回入れ替わるかを示す「換気の指標」を換気回数と言います。例えば、暖房時の換気回数(回/h)は、木造住宅では0.5〜1.0回/hであるのに対して、コンクリート住宅では0.2〜0.6回/hという測定結果もあります。木造では自然の空気の出入りが多く、コンクリートでは気密性が増して空気の出入りが明らかに減少します。そのため、気密性の高い住宅で、何らかの汚染物質が発生すると長時間室内で滞留することになります。事実、内部結露したエアコンの内部で発生したカビの胞子が室内に高濃度で長時間浮遊することによる「アレルギー性疾患」が顕在化しており、「室内浮遊カビの人への健康被害」が一般にも認知されつつあります。室内環境にはハウスダストアレルギーの原因となるチリダニ科のコナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニ、チャタテムシが必ず生息すると言っても過言ではありません。浴室や洗面所に良く発生する好湿性のクロカビ(クラドスポリウム属)やススカビ(アルタナリア属)は古くからアレルゲンとして知られています。これに加えて、チャタテムシの餌にもなる好乾性のカビ(アスペルギルス・レストリクタスなど)もアレルゲンとして近年注目されています。湿度65%程度から胞子が発芽できるカビで、書籍に貯留したハウスダストなどを栄養分にジワジワと繁殖します。



 現代の住宅に暮らす私たちは、「コナヒョウヒダニ、ヒラタチャタテ、カビ類の三つ巴の微生物アレルゲンに暴露されながら生活する危険をはらんでいる」。というのが、長年、この研究を行ってきた筆者らの見解です。


 ではどうすれば良いかと言えば、週に1回以上の掃除が効果的であると言えます。単純なようですが、中々出来ていない住宅が多いのが現実です。寝室や中学生〜高校生の子供部屋の掃除を怠るとアレルギー症状が悪化すると考えた方が良いでしょう。アレルギー疾患が国民病ともいえる昨今、アレルゲンを溜めないことを意識することが大切です。掃除をしなくても死にはしないけれども、重症アレルギー患者になる危険性があることを忘れないでください。


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(2017.03.31更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』
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室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】