(19)植物性乳酸菌の効果に注目

 便秘や花粉症の改善を期待したヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントなど数多くの商品が市販されています。これらの食品を継続摂取することにより、腸内の善玉菌を増加させ、悪玉菌を減少させてお腹の健康を守り、様々な疾病に対する免疫力を高めようという考えが一般にも普及してきました。この考え方や健康のために良い善玉菌を指してプロバイオティクスと呼ばれています。

 求められる条件として、胃酸や胆汁酸によって消化されずに腸まで届き、腸内で増殖できることが挙げられます。プロバイオテックスの代表である乳酸菌は、「糖を自らの栄養素として分解し、その分解過程で食品を腐敗させずに乳酸をつくる細菌類」の総称です。現在までに200種以上が知られており、代表的な種としてラクトバチルス属菌(Lactobacillus ;ラブレ菌など)、ビフィドバクテリウム属菌(Bifidobacterium ;ビフィズス菌)、ペディオコッカス属菌(Pediococcus)、ラクトコッカス属菌(Lactococcus)などが挙げられます。

 一般に「乳酸菌」と聞いてイメージするのは、ヨーグルトやチーズなどの乳製品の発酵に関わる細菌ですが、乳製品の発酵に関係している動物性乳酸菌は10数種ほどで、大半は植物性乳酸菌です。ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)のように「動物性の牛乳」と「植物性の米」のどちらからも見つかる種もあります。便宜的に乳製品の発酵に使われている乳酸菌を「動物性乳酸菌」、漬物などの発酵に使われている乳酸菌を「植物性乳酸菌」と呼んでいます(表)。

 動物性乳酸菌は動物の乳での増殖に最適化しており、乳由来の糖と豊富な栄養素が安定した環境が必要です。一方、植物性乳酸菌は植物に常在しているたくさんの微生物群の一つであるため、栄養素が乏しく、過酷な環境下でも増殖します。植物性乳酸菌はブドウ糖や果糖など様々な多糖類を栄養にして塩分濃度の高い環境でも増殖することから、世界中の植物性発酵食品に古くから利用されています。糠漬け、キムチ、ピクルスなどの酸味のある発酵食品にはラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、酸味と旨味のある味噌にはテトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)が利用されています。最近販売され、注目されている乳酸菌入りチョコレートには、京都の伝統的な漬物である「すぐき漬け」から分離されたラブレ菌が使われているようです。当研究室が独自に検査した結果、1粒当たり約1億個のラブレ菌が含まれていました。


 プロバイオティクスの効果を得るためには、長期間継続的に乳酸発酵食品を食べ続ける必要があります。腸内細菌群の数と比率は、加齢と食生活によって変化しますので、悪玉菌を抑制して整腸作用を促すためには1日当たり10〜30億個以上の乳酸菌の摂取が必要です。3度の食事や間食、サプリメントを上手に利用して意識的に乳酸菌を摂取することをお勧めします。



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(2016.3.18更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は4月1日(金)を予定しています。

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室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】