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ハウスダストに含まれるコナヒョウヒダニ

〜ダニを減らすには掃除が重要〜

  IPM研究室では、近年の住宅における室内塵性ダニの分布を明らかにするため、2014 年から一般住宅のハウスダストを調査しています。これらについては、学会で研究発表してきましたが、本稿では、寝室の床で採取したダストの分析結果からダニの分布について報告します。

 1970 年代以降の日本の住宅は、高気密性能を追求した造りが主流となり、年間を通じた室内の温度差が少なくなる傾向にあります。それに伴って、室内環境中の生物アレルゲンとして「室内塵性ダニ類= House dust mites」の繁殖が重要視されるようになりました。アレルギー疾患に悩む患者の血液検査でもダニアレルゲンに感作する人の増加が示唆されています。特に、チリダニ科のコナヒョウヒダニ(学名:Dermatophagoidesfarinae)とヤケヒョウヒダニ(学名:Dermatophagoides pteronyssinus)の2 種類が喘息などアレルギー疾患の原因となることが知られています。

 ハウスダストに生息するヒョウヒダニの研究は1960 年代から1990 年代にかけて盛んに行われ、マスコミでも大きく取り上げられましたが、2000 年代に入り、ダニを研究する研究者が少なくなったことなどから、近年にかけてのダニ調査報告数が減少しています。

 そこで、当研究室では、近年の住宅における室内塵性ダニの分布を明らかにするため、2014 年から一般住宅のハウスダストを調査しています。これらについては、学会で研究発表してきましたが、本稿では、寝室の床で採取したダストの分析結果からダニの分布について報告します。

コナヒョウヒダニ(Dermatophagoidesfarinae)

調査方法

 関東地方に所在する住宅38軒(東京都29軒、神奈川県4軒、埼玉県3軒、千葉県1軒、茨城県1軒)を調査対象としました。いずれも1970年代以降に建てられた近代住宅で、戸建が13軒、集合住宅が25軒です。調査箇所はそれぞれ寝室の床としました。床の材質は、フローリングが26軒、カーペットが6軒、畳が5軒でした。

 調査は2014年の春季(2月27日〜3月10日)、夏季(7月30日〜8月29日)、秋季(10月24日〜11月9日)にそれぞれ1回ずつ計3回実施しました。

 ハウスダストのサンプリングにはサイクロン式電気掃除機(DC63;ダイソン社)を使用。サンプリングする範囲と時間を一定にするため、床に90×180cmの範囲で樹脂製テープを使ってマーキングし、その範囲を正確に1分間計測して吸引しました。集塵されたダストを秤量し、ダーリング液浮遊遠心法にてダストに含まれるダニを分離しました。

結果1:ダニの種類とその割合

 38軒全ての住宅のダストからダニが見つかり、分離されたダニの総数は32,266頭となりました。そのうち、30,927頭(95.9%)がコナヒョウヒダニであり、分離されたダニの大半を占めました(図1)。1970年代から1990年代に実施された調査報告を調べてみると、コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの割合が拮抗している事例が複数ありますが、今回、ヤケヒョウヒダニの総数は505頭(1.6%)と少なく、過去の報告例と異なる結果となりました。室内のダニ相(生息状況)が変化してきていることを示唆する新たな知見と言えます。コナヒョウヒダニの割合が顕著に多くなった理由には様々な要因が挙げられます。住宅の高断熱高気密化が進み、時として室内が極端に乾燥していることが大きな要因となります。コナヒョウヒダニは若虫の一部が越冬することが知られ、ヤケヒョウヒダニよりも乾燥に強いという特長があります。このことが、他のダニを押しのけて優占種として繁殖するに至った理由ではないかと考えられます。

図1 調査を通じて分離されたダニの割合

結果2:ヒョウヒダニ数の季節変動

 床1m2あたりのコナヒョウヒダニの数(38軒の平均)は、春:26頭、夏:283頭、秋:194頭となりました(図2)。ヒョウヒダニの仲間は温暖な季節に繁殖するので、5月・6月に増え始めます。今回の調査では、春よりも秋の方が多くなりました。これは、繁殖時期が終わった秋になっても、床には多くのダニやその死骸が残っていることを示しています。冬に入ると徐々に減少して、春と同等になると予想されます。

図2 床1m2あたりのコナヒョウヒダニの数(38軒の平均)

結果3:掃除頻度とダニ数の関係

 秋のコナヒョウヒダニ数(床1m2あたり)を各住宅の掃除頻度で分けたところ、床の清掃が週1回未満の場合は平均422頭、週1回では平均152頭、週2回以上では平均18頭でした。掃除頻度を多くするほどコナヒョウヒダニの数が少なくなり、床の材質にかかわらず、週2回以上掃除している床は週1回未満の床に比べて、95%以上の減少率でした(図3)。このことから、小まめな清掃は床のダニ汚染の低減に有効であると言えるでしょう。

図3 秋における床のコナヒョウヒダニの平均数と掃除頻度の関係

 大掃除は年末恒例と言われていますが、秋のハウスダストには多くのダニが残留しています。これらを早めに除去することで、日常生活で暴露されるダニアレルゲンの量を減少させることができます。そこで、当研究室では大掃除の時期を年末ではなく気候の良い秋に実施する「秋そうじ」を推奨・啓発しています。

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(2017.08.18 IPM研究室)

IPM研究室では、「ダニ」「カビ」「微小昆虫類」「抗菌性評価」など
室内環境の有害生物の研究・調査に対応いたします。

【室内環境生物分野の試験および研究】
  • 室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究
  • 喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルゲンとなる生物の研究
  • 大学や国公立の研究機関との共同研究
  • 空気清浄機の除菌性能評価、抗菌素材の性能評価などの商品実用試験
  • 異物混入検査

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