vol.68 伸縮性のあるインナーやシャツの捨て頃は?


 身体にフィットしながら締め付け感が少ないブラトップやユニクロのヒートテックに代表される機能性インナーは、今や定番中の定番。インナーだけでなく、薄手の布帛で作られたシャツなども伸縮性のあるものが多く出回っています。これらの伸縮性を付与する糸は『ポリウレタン糸』です。


 インナーの場合、ポリウレタン糸にナイロン糸やポリエステル糸を巻き付けた弾性糸(カバード糸)で編まれ、縦横自在に伸びます。また、シャツなどの織布の場合は、綿やポリエステルなどの経糸(タテ糸)と、綿などの繊維で被覆したポリウレタン糸(コアスパン糸、プライ糸など)の緯糸(ヨコ糸)で織られており、縦方向には伸びませんが横方向にはよく伸びます。これら一枚の衣類に使われているポリウレタンは、繊維の割合で言えば、わずか数%に過ぎませんが、弾性糸であるポリウレタン糸がプツプツと切れて生地の表に飛び出したり、生地が伸びて外観が極めて悪くなってきたりすると服の寿命。買い替え時になります。

伸縮性のあるインナーやシャツ

 ではなぜ、プツプツと切れだすのでしょうか?
 このポリウレタン弾性糸は、ジイソシネートとポリオール、さらにグリコールなどの鎖延長剤からなるハードセグメントとソフトセグメントとの交互共重合体の合成糸です。ポリオールのタイプから、ポリエステル系ポリウレタンとポリエーテル系ポリウレタンとがあり、その特徴は、ポリエステル系が耐熱、耐光、耐油、コストに優れ、一方、耐加水分解、耐寒、弾性にはポリエーテル系が優れています。また、衣料品分野ではない車などに使われるポリウレタン樹脂には、非常に耐久性が高いポリカーボネート系と、用途によって、さまざまな種類のポリウレタンが使われています。


 ポリウレタンはその構造の性質上、糸の劣化は避けられません。そしてこの劣化はポリウレタンを合成した時から始まっています。衣類の品質保証を何年にするかということもありますが、通常、衣類に使用されるポリウレタンの寿命は、製造からおおむね3年程度と言われています。ここで注意したいのが、この寿命は購入の時からではなく、あくまでも“製造から”であること。場合によっては、ハードな使い方をしていないにもかかわらず、他の素材を使った衣類より早くダメになってしまうということが起きるかもしれません。


 ポリウレタンは空気中の水分で徐々に加水分解が進み劣化が始まります。加水分解だけでなく、空気中のNOX・SOXガスによる劣化、紫外線による劣化、熱劣化など、さまざまな外気環境の因子で劣化していきます。「一度しか履かなかったスキー靴を十数年ぶりに取り出したら、ポリウレタン樹脂の靴底部分がボロボロに砕けた」という事例などは、空気中の水分とNOX・SOXガスによる自然劣化が原因です。外気環境だけでなく、日々の洗濯は、洗濯と日光暴露を繰り返すことになりますので、当然のことながら、綿やナイロン、ポリエステルの衣料よりは劣化が早く進むことになります。また、伸縮性のある綿の白シャツなどは、アイロンがけでは、ポリウレタンの低温設定ではなく、綿のシワ取りのために高温設定で仕上げをしてしまいますが、これはポリウレタンの熱劣化を促進することになります。また、白シャツのシミ取りで塩素漂白すれば、さらにポリウレタンの劣化を引き起こすことになります。


 ポリウレタン糸を使用した伸縮性衣類は、他の衣類より廃棄時期が短くなることを自覚しつつ、天日干しの場合は、直射日光が当たらない場所に干す、衣類と衣類の間に干すなど工夫をしてみてください。また、アイロンをかけないで済むように、衣類の形状を整え、小ジワを伸ばしてから干すようにすると、もともと伸縮性があるだけに、キレイに仕上がります。

(2017.3.29)

生活科学研究室