(119) お弁当のご飯を冷ます

  冷やすより風を当てて

 4月からお弁当作りを始めた方も多いのではないでしょうか。お弁当は、ご飯やおかずが熱いうちに蓋をすると蒸気がこもって水滴になり、ばい菌が繁殖しやすい環境を作ってしまうため、冷ましてから蓋をすることが推奨されています。でも、忙しい朝にお弁当を作ってキチンと冷ます、という作業は時間がかかって大変です。そこで、10分という短い時間でどれだけご飯の温度を下げられるか検討しました。

   
お弁当のご飯
 

● ご飯
 無洗米3合(450g)に水700gを加えて炊飯器で炊き、炊飯後、全体を混ぜて15分蒸らした炊き立てご飯を使用しました。


● 冷まし方
 ご飯200gをお弁当箱(プラスチック容器約10×10×5cm:容量400ml)に入れ、基準を①すぐに蓋を閉めて調理台に直置きする、としました。そして、蓋をはずした11の方法と比較しました。
 調理台に直置きする方法は、②直置きするだけ ③最初の2分は団扇で扇ぐ ④45cm離れた扇風機の風を当てる——の3パターン。
 焼きたてのクッキーなどを冷ますために使うケーキクーラーは冷ますことが得意な調理道具であると考え、これにのせる方法も試しました。⑤ケーキクーラーに置くだけ ⑥最初の2分は団扇で扇ぐ ⑦扇風機の風に当てる——の3パターンです。
 また、冷凍庫で凍らせた保冷剤も使ってみました。⑧保冷剤大1個の上に置く ⑨保冷剤小4個の上に置く——の2パターン。さらに、⑩桶にお弁当箱の半分の高さになる20℃の水を入れ、お弁当箱ごと水に浸けました。
 さらに、お弁当箱に詰める前に直径20cmの皿にご飯を広げ、⑪調理台に直置きする ⑫調理台に直置きして最初の1分は団扇で扇ぐ方法も比較しました。


ご飯の冷まし方


温度変化と重量変化

● 温度変化
 炊きたてご飯をお弁当箱に詰めた直後と10分後の温度を数カ所ずつ測定し、もっとも高い温度をデータとしました。皿に広げたご飯の温度は10分後にお弁当箱に詰めた後、測定しました。
 お弁当箱にご飯を直接入れた場合、扇風機使用(④⑦)の温度がもっとも下がりました。団扇で扇ぐ(③⑥)、保冷剤使用(⑧⑨)、水に浸ける(⑩)はいずれも同程度で、それほど下がりませんでした。
 置くだけ(②⑤)は、すぐに蓋を閉める方法(①)と変わりませんでした。また、ケーキクーラーに置く方法(⑤⑥⑦)は、調理台に置く方法(②③④)よりも温度が下がる速度がわずかずつ遅く、使用する意味がありませんでした。
 一方、皿に広げる(⑪)は、扇風機使用(④⑦)より温度が下がり、団扇で扇ぐ(⑫)とさらに効果的に温度が下がりました。


● 重量変化
 お弁当箱に直接ご飯を入れてすぐに蓋をする(①)は、蓋についた水滴の分だけ重量が減少しましたが、ほとんど元の重量と変わりませんでした。
 お弁当箱に入れて冷ました場合、扇風機使用(④⑦)は重量が減少しました。一方、皿に広げる(⑪)は、扇風機使用(④⑦)より重量が減少せず、団扇で扇ぐ(⑫)も温度が下がる割には減少しませんでした。


● ご飯の状態
 冷ましたご飯を3名の研究員で食べ比べてみました。
 扇風機使用(④⑦)は、表面が少し乾燥しましたが、問題なく食べられました。保冷剤使用(⑧⑨)は、保冷材に接している容器とご飯との温度差で容器の底に結露が生じ、全体としてご飯が水っぽくなりました。一方、皿に広げて団扇で扇ぐ(⑫)は十分に冷めたため、ご飯がかたまってお弁当箱に詰めにくくなってしまいました。
 保冷剤を使ったり、水に浸したりするよりも、風を当てたり、皿に広げたりする方が、おいしさを損なわない効率のよい冷まし方であるといえるでしょう。


● まとめ
 お弁当箱に炊きたてご飯を詰めて冷ます場合、扇風機で風を当てる方法がもっとも短時間で温度を下げました。しかし、ひと手間かかりますが、一旦、皿に広げた方が冷めやすく、ときどき団扇で扇げばさらに効果的に冷ますことができます。
 扇風機や団扇を使うときは、ホコリの立ちにくいところで使ってください。ホコリが入るのが気になるからと、キッチンペーパーで覆ったり、蓋をずらしてのせたりすると、冷まし効果は低下します。扇風機の風の強さによっては、風が当たった部分のご飯が乾いてかたくなるので気をつけてください。
 保冷材の使用は、ご飯が水っぽくなってしまいますし、結露が衛生環境を悪くすることもありますので、ご飯を冷ますときにはお勧めしません。ばい菌が繁殖しやすい温度帯は35℃前後。保冷材は、食べるまでの温度管理に使用するといいでしょう。

(2016.04.22)


産経新聞掲載記事『比べる×調べる』

 

食品料理研究室