環境レポート・美容・健康コラム
Vol.12 生活に隠れた微生物の利用
<2019.2.22 更新>

 微生物は私たちの生活と密接に関係しています。私たちは微生物が作り出した成分を取り出し、利用して生活しています。今回は、様々な分野で使用されている微生物の産生物について、いくつか例を挙げてお話しします。


 1つ目は「アミノ酸やうま味成分」です。身近なものでは、和風だし顆粒やうま味調味料に含まれています。商品の外装に「調味料(アミノ酸等)」と表示されている「アミノ酸等」は、昆布のグルタミン酸やカツオ節のイノシン酸などのうま味成分です。これらは、昆布やカツオ節から直接取り出されているのではなく、微生物の働きを利用して作られています。
 例えば、グルタミン酸は、グルタミン酸生成細菌(Corynebacterium glutamicum)が、サトウキビやキャッサバの糖質を基に作り出します。微生物の働きを利用することで、アミノ酸を効率よく、安定的に作り出すことが出来るため、調味料やアミノ酸飲料、アミノ酸を含んだ医療用製剤、家畜飼料などに利用されています。


 2つ目は、「医薬品」です。病気に罹ったとき、医師から「抗生物質」が処方される場合があります。 抗生物質は、「微生物が産生し、他の微生物の発育を抑える物質」を指し、医師から処方される抗生物質の多くは、主に細菌の生育を抑える作用があります。微生物が作り出す、細菌に作用する物質を取り出して、抗生物質として利用しています。他に、殺虫作用のある薬や免疫抑制剤など様々な医薬品も、微生物が産生した成分を応用して作られている薬品が数多く開発されています。
 例えば、2015年に大村智博士がノーベル賞を受賞した研究は、寄生虫やダニ、クモなどの節足動物に強い殺虫作用がある、エバーメクチン(Avermectin)という成分に関する内容でした。エバーメクチンは、エバーメクチン生産菌(Streptomyces avermectinius)が産生する成分で、現在もS. avermectiniusのみがこの成分を作り出せるため、工業的にこの細菌を増やして薬を生産しています。


 3つ目は、微生物が作り出す「素材」です。前回のコラムで、酢酸菌(Gluconacetobacter xylinus)がセルロース繊維を作るとお話ししました。微生物が作る繊維は、「バクテリアセルロース」と呼ばれ、植物が作る繊維よりも綿密な形をしているため、引っ張る力やねじる力に強く、高い保水性があります。この性質を利用して、化粧品業界ではフェイスマスクに、工業では音響部品やディスプレーなどに応用されています。


 他にも、代替燃料の「バイオエタノールやバイオディーゼル」、「ビタミンB12やカロテノイド」なども微生物の働きで作られています。食品以外の分野でも微生物は幅広く利用されており、私たちの生活に欠かせない一大産業として重要な役割を担っています。

 カビや細菌などはヒトに害を及ぼす悪いものというイメージを持つ人もいると思います。しかし、微生物にも様々な性質があり、ヒトに利益をもたらすものも多く存在します。微生物は多様性に富んだ面白い生物の集まりと知ってもらえたら嬉しいです。

※この号で新人コラムは終了とさせていただきます。お付き合い頂きありがとうございました。


(コマツ)


 ねっとりしたサトイモと発酵漬物のザーサイの風味がよく合います。
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サトイモとザーサイの春巻き(産経新聞2018年10月1日掲載)


暮らしの科学部 美容・健康・料理研究室に入りましたコマツと申します
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