(34)酒をさらに発酵させると食酢になる?!

 食酢は、細菌の一種である酢酸菌「アセトバクター・アセチ」(Acetobacter aceti)の持つ、エタノールを分解して酢酸を作る性質を利用した発酵食品です。食酢は酒から作られるため、歴史的には醸造酒とほぼ同時期に完成したと考えられています。酢酸菌は環境中の様々なところに存在しているので、世界中の酒造とともに発展していて、欧州ではワインを原料としたワインビネガー、日本では米を原料とした米酢が作られてきました。現在の作り方も機械化や衛生管理の進歩はあるものの、古くから連綿と続いている製造法とほぼ同じです。



 まず、原料である穀物や果実を、清酒やワインの作り方と同じ製法で麹菌「アスペルギス」(Aspergillus)や酵母「サッカロミセス・セレビシエ」(Saccharomyces cerevisiae)を使って材料中の糖をアルコールに変化させることにより酒を作ります。できた酒に酢酸菌を加え、アルコールを酢酸に発酵させることで酢になります。実際の商品は、更に熟成して味をまろやかにした後、ろ過・殺菌を行うことで液中の酢酸菌と不純物を取り除いてから流通されています。

 国内の食酢の種類は食酢品質表示基準によって区別されており、発酵でできた酢を醸造酢、水で薄めた酢酸に味をつけたものや醸造酢に酢酸を加えたものは合成酢として分けられています。醸造酢は原材料の違いによって種類が分けられており、米、麦、酒かす、コーンなどを材料とする穀物酢と、リンゴやブドウなどの果物を材料としたものを果実酢と呼びます。


 行楽シーズンで、家族や友人と出かけることも増えるかと思います。出先にお弁当を持参する場合には、ちらし寿司や稲荷寿司など酢飯を使うことをお勧めします。食酢が細菌の増殖を抑える効果(静菌効果)を持つことは古くから知られていますが、これは食中毒を起因する細菌の多くが酸性を苦手とするためです。


 しかしながら、消毒用エタノールや漂白剤(次亜塩酸ナトリウム)のように強い殺菌力を酢は持っていません。時々、雑誌などで紹介する掃除法で「お酢を使いましょう」などと紹介していることがありますが、浴室などの住環境中や冷蔵庫の中などに使用することはお勧めしません。食酢には糖やアミノ酸など微生物の栄養分が豊富に含まれており、かえって繁殖を促すこともあります。くれぐれもご注意ください。


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(2016.10.14更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は10月28日(金)を予定しています。

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