(27)動物性乳酸菌は善玉菌だけではない!

 糖を分解して、乳酸発酵を行う細菌は「乳酸菌」と呼ばれます。腸内環境を整える善玉菌として良く知られていて、ヨーグルトや健康食品に利用されるラクトバチルス目の乳酸球菌(ラクトコッカス)と乳酸桿菌(ラクトバチルス)はその代表格で、健康増進や免疫力アップなど、その機能が再注目されています。乳酸菌の定義は、代謝物の50%以上が乳酸である細菌とされています。

 善玉菌のイメージが強い乳酸菌(ラクトバチルス目)ですが、仲間に病原菌も沢山含まれています。虫歯の起因菌であるストレプトコッカス・ミュータンスは、ミュータンス菌(歯垢)として知られています。手足の壊死を引き起こす「劇症型溶血性A群レンサ球菌感染症」の原因菌となるストレプトコッカス・ピョーゲンスは、人喰いバクテリアと呼ばれて話題になりました。




 一方、乳酸菌ではないものの、同じ乳酸菌と考えられがちなのが、ビフィズス菌です。実は、細菌学的には全く別のグループになる「放線菌」の仲間で、ビフィドバクテリウム目のに属する細菌です。ビフィズス菌は成長する環境によって、桿状、球状、Y字状、V字状など様々な形になる細菌です。ヒトの腸内には、乳酸菌類は1〜100億程度棲んでいますが、ビフィズス菌は1〜10兆個程度あると言われ、腸内の善玉菌の大半を占めています。ビフィズス菌も糖を栄養源としていますが、乳酸菌とは違い乳糖の他に酢酸を代謝します。ビフィズス菌の活動によって腸内の水素イオン濃度(pH)が低下して酸性になることで腸内環境を整えます。また、乳酸菌類も、ビフィズス菌のサポート役としてビフィズス菌が生息しやすい腸内の環境を作ります。



 放線菌の仲間には腸内善玉菌であるビフィズス菌の他に、ストレプトマイシンをはじめとした抗生物質を産生する有用な細菌が多く含まれています。一方で、結核菌やハンセン病の起因菌であるライ菌のような著名な病原菌も含まれています。そのほか、洗濯槽の裏側にバイオフィルム(粘性の膜)を形成して悪臭の原因となるのも、放線菌の仲間であるマイコバクテリウム(Mycobacterium)属の細菌が主たる原因のようです。せっけんの残りカスや、洗濯水の汚れなどの有機物を養分にして繁殖します。バイオフィルムを放置すると、カビも生えやすくなりますので、湿気の多い時期は特に注意しましょう。


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(2016.7.8更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は7月22日(金)を予定しています。

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