(20)春先に出る小バエ、アレルゲンとなるユスリカに注意!

 日ごとに陽光がまぶしく、春爛漫の季節になってきました。暖かくなるにつれて越冬から目覚めた昆虫たちの活動が活発になります。今ごろの季節から夏季にかけて都市河川や用水路、あるいは排水溝の上や周辺で小バエと思われる小さな昆虫がたくさん群飛している様子を目にすることがあります。この小さな昆虫はハエ目の属するユスリカ科昆虫である可能性が大です。

 この昆虫の群飛に遭遇して、不快な思いをされた経験のある方も多いと思います。群飛は、古くから蚊柱と呼ばれ、数百匹から数千のオスだけの群れで出来ています。単独で生活するメスは、繁殖時期になるとオスの集団である蚊柱の中に飛び込んで、一番お気に入りのオスを見つけて交尾し、川面などに産卵します。

 ユスリカは漢字で「揺蚊」と書きますが、これは幼虫が水底で泥から半分体を出してユラユラ揺れている姿に由来します。幼虫は、釣りをする人ならば餌としてなじみのあるアカムシとも呼ばれる細長い虫です。幼虫時に蓄えた栄養素のみで生活し、成虫の寿命は1日から数日ほど。成虫は蚊と似ていますが、口や消化器が退化しているために蚊のように刺したり、血を吸わないばかりか一切餌を取りません。

 一般的に、「小バエの大発生」と聞くと、汚水や生ごみが発生源であることが多いのですが、ユスリカは必ずしも汚水から発生しているわけではありません。国内には2,000種を超えるユスリカがおり、種類によって淀んでいる水域、常に流れている川、渓流のきれいな川、湖水、海水まで様々な水域に生息しています。このため、生息しているユスリカの種類を調べることで、その水域の汚染度がわかる環境指標生物であるともいえます。


 昭和40年〜50年代、琵琶湖や霞ケ浦など大きな湖では生活廃水の流入によって湖が富栄養化し、公害とも呼べるほどの大量のユスリカが発生し社会問題となったことがありました。水質改善策によって発生数は減少しましたが、現在でも、水辺に近隣する住宅や店舗の壁や洗濯物へ降着して潰れて汚染することが問題となっています。当研究所で昨年4月末に、多摩川流域にある5件の住宅に飛来するユスリカの数を調べたところ、1週間で50〜80匹を超えるユスリカが捕まる住宅もありました。

 近年、ユスリカはアレルギー疾患の原因となることも判明し、単なる不快害虫で済まされない一面もあります。ユスリカが大発生した場合、寿命が短いことから大量の死骸が貯留することになります。死骸となった個体群は乾燥して破砕されと微細塵となり、空気中に浮遊します。これを吸い込むことによってアレルギー性鼻炎や喘息(ユスリカ喘息)を引き起こします。窓のサッシに貯留したユスリカの死骸は要注意です。

 夜、明かりにつられて網戸に飛来した大量のユスリカが、窓際で死がいとなり窓開け換気の度に室内に入り込むこともあります。春先から初夏にかけては、特に意識的にサッシの清掃をこまめに行いましょう。



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(2016.4.1更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は4月15日(金)を予定しています。

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