(15)焼酎のルーツ、泡盛

 寒い季節、お酒好きには焼酎のお湯割りと鍋物が良く合います。焼酎は日本が誇る蒸留酒です。また、沖縄が生産地である泡盛も国産蒸留酒の一つです。この2種類は、何が違うのでしょうか。


 焼酎と泡盛が大きく異なる点は原料です。焼酎の原料は芋、麦、米と様々ですが、泡盛の原料は米のみです。また、本土の米焼酎は清酒の原料と同じ短いジャポニカ種が使われているのに対して、泡盛はタイ米と呼ばれる細長いインディカ種が使われています。


 歴史的には、大陸で生まれた蒸留酒の技術が沖縄を通じて、日本に広まったとされています。そのため、泡盛とその他の焼酎は製造法が非常に良く似ています。どちらも原料に麹菌の発酵で作った米麹と酵母を加えて、発酵させます。発酵した「もろみ」と呼ばれる原料を蒸留することで出来上がります。


 現在、焼酎の醸造に使われる麹菌のルーツも泡盛の麹菌です。古くは、米麹を作るために日本酒と同じ黄麹菌(アスペルギルス・オリゼ;Aspergillus oryzae)が焼酎の製造に全国的に使われていました。黄麹菌は雑菌の混入に弱いため発酵に繊細な温度管理が必要で、九州地方など暖かい地域ではもろみを作るまでに腐敗してしまう難点がありました。20世紀初頭、沖縄の泡盛造りに使われていた黒麹菌(アスペルギルス・リューチュエンシスA. luchuensis)の中から焼酎造りに適した種類が見つかりました。黒麹菌は黄麹菌よりも雑菌に強いことから九州地方での焼酎造りに広まりました。その後、リューチュエンシス変異菌株である白麹菌が発見され、温度管理をはじめとした環境管理が簡単なことからクロコウジとともに焼酎の醸造に広く普及しています。黒麹菌は黒いカビですが、白麹菌は薄い褐色に見えます=写真。焼酎には白麹、黒麹、黄麹といった様々な麹が製造に利用されますが、泡盛は黒麹のみを利用しています。


 焼酎や泡盛は日本酒と異なりアルコール度数が高いため(最低でも20度、高いもので58〜60度)、古くから長期保存による熟成が行われていました。焼酎は長期間熟成させることでまろやかな味わいになるとされ、特に泡盛では3年以上寝かせたものを「古酒(クースー)」と呼び、愛飲者に好まれています。かつての沖縄には貯蔵期間が百年を超える古酒が複数存在していましたが、そのほとんどが沖縄戦により失われたとされています。酒造所自体も壊滅し、古くから泡盛造りに利用されていた黒麹菌もこの時、失われました。現在の泡盛に用いられている黒麹菌は、一部を除いて20世紀初頭に沖縄から九州へ伝わっていった黒麹菌の系統です。いわば、黒麹菌の里帰りとも言えるでしょう。泡盛も焼酎も日本酒と同様、世界に誇るべき素晴らしい酒です。
 これらを生み出した麹菌に感謝したいものです。



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(2016.1.22 更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は2月5日(金)を予定しています。

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