(14)ニンニクやワサビでお餅を長もち

 無菌完全包装のお餅が主流となりつつあります。しかしながら、餅つきをして、自家製ののし餅を作って召しあがるご家庭も多いように思います。自家製餅の難点は、保存中のカビの発生です。「お餅に生えたカビは安全」と思って、カビを削り取り、かき揚げ餅にして食べた経験がある方もいるのではないでしょうか? 日本鏡餅組合は「カビが生えたお餅は食べられません」と注意喚起しています。


 室内の空気中には多種多様なカビが浮遊しています。人体に無害なカビとカビ毒を生産する有害なカビが混在していることが多く、無害なカビであっても体内に蓄積されて、ある日突然、アレルギーを引き起こすなど悪影響を及ぼす可能性があることが指摘されています。また、昔と今の住宅の構造の違いも、有害なカビが室内に浮遊する一因であると思われます。「子供の頃から食べていて大丈夫だったから」と安易に考えるのは「昔の常識、今の非常識」です。カビの生えたお餅を食べるのはやめましょう。


 肝要なことは、お餅にカビを生えないようにして保存することです。たくさん作り過ぎた場合には、食品保存用のチャック式ポリエチレン袋に入れて冷凍庫で保存しましょう。これは、炊いたごはんを保存することと同じ考えです。お餅の風味を考えて年末から鏡開きくらいまで常温で保存する場合には、抗菌効果の高いニンニクやワサビを利用して保存しましょう。この保存法は、当研究室で既に15年程前に実施して検証しています。


 今回、記事の掲載にあたって、「すりおろした生ニンニクと市販のチューブ入りニンニク・ワサビ・ショウガ」を使って、防カビ効果を再検証してみました。実験は5つの樹脂製容器(1.4L)に、切り餅だけ入れた無処理区と切り餅とそれぞれ10グラムの試験品を入れた試験区を作り1週間室温で密閉保存しました。この結果、すりおろした生ニンニクとチューブ入りワサビをいれた試験区ではカビが全く生えませんでした。また、チューブ入りニンニクでは少しカビ発生しました。


 ニンニクには独特な香りのもとでもあるアリシンが、ワサビにはアリルイソチオシアネートと呼ばれる揮発性殺菌成分が含まれています。これらの成分によってカビの成長を阻害し、繁殖を抑制する効果が期待できるようです。アリシンは、多くの種類の細菌や真菌に高い殺菌効果があることが知られています。しかし、安定した化合物ではないため、時間経過とともに分解されてしまいます。すりおろした生ニンニクとチューブ入りニンニクで抗菌効果に差が出たのはこのためだと考えます。揮発性殺菌成分は文字通り揮発性ですので、密封状態でなければ防カビ効果が得られません。この保存法を使う場合には、密閉できる樹脂製の容器や保存袋を使ってください。



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(2016.1.8更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は1月22日(金)を予定しています。

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室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】