(13)箱詰めミカンのカビを防ぐには

 年末年始の定番として、箱詰めミカンを購入される方が多いと思います。食べていくうちに、下の方からカビが生えてしまったミカンを見つけて嫌な思いをされた経験はありませんか? ミカンになぜカビが生えるのか。また、カビを生やさないためにはどうすれば良いか述べたいと思います。


 ミカン農家が収穫したミカンを箱詰めする時点でカビは生えていませんし、カビはミカンの皮の上で簡単に繁殖できません。ではなぜミカンにカビが生えるかというと、輸送中に一部のミカンに圧力がかかり、皮に傷がついてしまうことが一番の原因です。農産物には多かれ少なかれ、カビの胞子が付着していますが、傷ついた皮から内部の水分が出てくることによって、繁殖に利用するための水分をカビに与えることになります。


 ミカンの上に生えるカビの多くは、アオカビの仲間であるペニシリウム・ディジタータム(Penicillium digitatum)とペニシリウム・イタリカム(Penicillium italicum)です。これらのカビは、ミカンに含まれるプロリンと呼ばれる成分によって成長が促進されるため、他のカビよりも早く繁殖することができます。これらのカビは、樹上で傷がついた果実にカビが生えてしまう「カンキツ緑かび病」の病原カビとしても知られています。


 箱詰めミカンをアオカビの発生被害から守るためには、発生原因となる傷のついたミカンを取り除くことが肝心です。箱詰めミカンを購入したら、面倒でもミカンを全て出して傷ついたミカンがあるかどうか点検しましょう。一見して傷がついていなくても、圧力で柔らかくなったミカンは取り出しましょう。すでにカビが生えていたら廃棄しますが、そうでなければ先に食べてしまいましょう。再びミカンを箱に戻す際にひと工夫。クシャクシャに丸めて広げ直した新聞紙を数枚用意し、ミカン箱の底に敷き、その上にミカンを丁寧に並べ、後は新聞紙とミカンを順番に重ねていきましょう。こうすることで、新聞紙がクッションになり、ミカンに掛る圧力を緩和し、ミカンとミカンの隙間の通気を促します。いったんミカンを出した際に、布に消毒用エタノールを含ませて表面を吹いておくと、原因カビの殺菌になり、より一層のカビ防止効果が期待できます。


 基本的にミカンに生えるアオカビは、カビ毒を産生しません。しかし、アオカビの仲間には、腎臓がんを引き起こすシトリニンと呼ばれるカビ毒を産生するペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)をはじめ、様々なカビ毒を産生する悪玉カビがいます。悪玉カビは、毒性のないアオカビと見た目がほとんど変わりません。カビの生えたミカンの一部だけを取り除いて口にすることは危険です。もしも箱詰めミカンにカビが生えてしまったら、カビが生えたミカンはビニール袋に入れてしっかり封をして廃棄してください。残りのミカンは水洗してカビ胞子を洗い落としてから食べると良いでしょう。



【関連キーワード】 
ミカンのカビ,アオカビ,ペニシリウム・ディジタータム,Penicillium digitatum,ペニシリウム・イタリカム,Penicillium italicum,ペニシリウム・シトリナム,Penicillium citrinum



(2015.12.25更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は1月8日(金)を予定しています。

IPM研究室

IPM研究室
室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】