(11)チーズ熟成とカビとの関係

 世界一チーズを食べる国はフランスで、一人当たり年間におよそ26キロも食べるようです。日本人は年間2キロくらいのようですが、年末年始のパーティーで、チーズを食べる機会が増えるのではないでしょうか?チーズはウシをはじめヤギやヒツジなど家畜の乳を主原料とした保存食で、発祥地は定かではありませんが、その歴史が古く、紀元前5500年頃のポーランドで既に作られていたことを示す製造具が見つかっています。


 チーズの主成分は乳に含まれる「カゼイン」というタンパク質です。乳酸菌による発酵で酸性になった乳に、「レンネット」と呼ばれる酵素を加えるとカゼインが固まり、凝固物である「カード」ができます。カードに圧搾や塩漬けなどの加工を加え、乳酸菌やカビで熟成させたものがナチュラルチーズ。ナチュラルチーズを加熱、溶解して再度固めたものがプロセスチーズ。


 カビを使って熟成させるチーズは青カビタイプの「ブルーチーズ」と白カビタイプの「カマンベールチーズ」の2つのタイプが有名です。いずれも、カビが産生する酵素や代謝産物の働きによって独特な風味と香りが醸し出されます。カビの種類から見ると同じアオカビ属(Penicillium属)のカビで、世界三大ブルーチーズと呼ばれる「ゴルゴンゾーラ」、「スティルトン」、「ロックフォール」には、ペニシリウム・グラーカム(P. galaucum)、または、ペニシリウム・ロックフォルティ(P. roqueforti)が使われています。世界的に著名なチーズは産地指定を受けており、例えば、ロックフォール地方の洞窟でパンに生えたカビを使ったチーズのみがロックフォールチーズとして売ることができます。


 カマンベールチーズでは、通称「白カビ」と呼ばれるペニシリウム・カマンベルティ(P. camemberti)をカードの表面に植えつけて熟成させます。アオカビの胞子の色は緑色や黄緑色ですが、菌糸は無色〜白色です。チーズの表面では菌糸だけが伸長し、胞子が形成されないためチーズ全体が白く見えるのです。


 カマンベールチーズは、カビが過剰に増殖しないよう殺菌したものが流通していますが、ブルーチーズでは殆ど殺菌されていません。生きたアオカビが大理石模様に散りばめられていますが、アオカビは比較的繁殖スピードが早いカビなので、冷蔵庫の中でも熟成が進みます。食べる方の好みにもよりますが、購入後2週間以内には食べた方が良いでしょう。
 また、チーズに利用されているアオカビとは異なる色形のカビがチーズに生えてしまったら、カビ毒汚染の危険性がありますので、食べずに廃棄してください。




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(2015.11.27更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は12月11日(金)を予定しています。

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