(8)秋の食中毒にご用心

 一般に「食中毒の発生は夏季」と認識されていますが、厚生労働省のHPで公開されている食中毒統計資料によると、昨年9月〜11月に計234件の食中毒が発生しています。同年6〜8月の合計発生件数は231と秋の食中毒も夏季同様に起きています。食中毒の原因1位は細菌によるもので合計120件発生していました。原因菌のトップはカンピロバクター属菌(主にCampylobacter jejuni,C. coli)、次がブドウ球菌(主にStaphylococcus aureus;黄色ブドウ球菌)と記録されています。秋の行楽でバーベキューに出かけ、加熱不十分な肉を食べたり、予想外に細菌が増えた弁当を食べることが食中毒の原因とされています。

 古くから食品の腐敗を防ぐ手段として、お酢の利用があります。含有成分の酢酸に微生物に対する繁殖抑制効果があることは、食酢メーカーはじめ多く研究機関が検証しています。当研究室でも一般消費者の目線に立った実使用試験を行っています。


 炊いたご飯とそれに寿司酢を混ぜた酢飯600gをそれぞれステンレスバットに取り、サランラップをかけて約25℃の室温におきます。調理直後と、15時間および24時間経過後のそれぞれの細菌数を調べました。その結果、ご飯と酢飯の細菌数の増加に大きな差が見られました。調理直後の細菌数はほぼ同じでしたが、ご飯の細菌数は時間の経過とともに増殖し、24時間後にはおよそ80万個/gに増加しました。これに対して、酢飯の細菌数は24時間後でも30個/gでした。24時間後の細菌数の差でみると、酢飯は細菌の増殖を10万分の1に抑えていました。お酢がもつ細菌に対する「静菌効果」が非常に高いことがわかります。


 当研究室が以前実施した「まぜごはんの具材を混ぜた同様の実験」でも、酢飯に著しい静菌効果があることを確認しています。今回の実験は室温条件下で実施していますが、背中に背負ったリュックサックの中に入れたお弁当は直射日光に当たると30℃近くになり、細菌の増加スピードが速くなることが懸念されます。

 厚生労働省は食中毒予防の3原則として、細菌やウイルスを「①つけない」、「②増やさない」、「③やっつける」と提唱しています。お酢は3原則の中の「②ふやさない」に該当します。お酢の静菌効果を上手に使って、秋の行楽シーズンに食中毒を起こさないよう心掛けましょう。




【関連キーワード】 
カンピロバクター属菌(Campylobacter jejuni,C. coli),ブドウ球菌(Staphylococcus aureus;黄色ブドウ球菌),酢,静菌効果



(2015.10.16更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は10月30日(金)を予定しています。

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室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】