(7)パンケーキシンドローム

 パンケーキやお好み焼きを食べた後、呼吸困難を伴うような即時型アレルギー(アナフィラキシーショック)を発症した事例が2013年〜2014年に相次いで報告されています。当研究室ではこのうち5つの事例について大学病院などからの依頼で原因究明を行い、日本小児科学会などで報告しました。コナヒョウヒダニ(学名:デルマトファゴイデス・ファリナエ)が開封後の小麦粉製品に混入し、更に袋の中で大繁殖したものを知らずに食べたことが即時型アレルギーの原因です。このような症例は、日本でも30例以上が知られており、お好み焼き粉やホットケーキミックスなどの小麦粉製品で多くみられるため、〝パンケーキシンドローム〞とも呼ばれています。コナヒョウヒダニ由来のアレルゲンが口から胃を通り、腸から吸収されていくため発症までに少し時間がかかりますが、食後1時間くらいしてから腹痛、咳、じんましん、顔面紅潮、そして呼吸困難の症状が現れます。


 これまでの報告症例と当研究室が検査した症例から、家庭内で、ダニ繁殖による事故を起こしたお好み焼き粉やホットケーキミックスは、開封から半年以上経過したものが多いようです。しかしながら、実際にどのくらい放置するとダニが繁殖するかを示す検証データがありません。そこで、①小麦粉、②お好み焼き粉、③ホットケーキミックスの3種の製品を5軒の住宅のキッチンに置いて再現実験を行いました。それぞれ開封した3製品のポリエチレン袋を輪ゴムでくくり、外箱に入れて室温下に放置しました。再現試験は2013年1月から2014年3月まで3ヵ月ごとに、計5回それぞれの粉の一部を回収してダニの混入と繁殖の有無を調べました。


 再現実験の結果、3軒の住宅のお好み焼き粉とホットケーキミックスからコナヒョウヒダニが分離されました。3ヵ月後にお好み焼き粉にダニ混入が認められた住宅が1軒ありましたが、この住宅ではその後の繁殖は認められませんでした。グラフに示す1軒で、15ヵ月後に1グラム当たり約1,300匹のコナヒョウヒダニが分離されました。1グラム当たり約50匹でアナフィラキシーを発症した症例があるため、この数値は〝パンケーキシンドローム〞を引き起こす危険水準と言えます。

 開封した袋の口をキチンと縛らず、小麦粉製品の置き場所の周囲に粉がこぼれていたりすると、それがダニを誘引して、袋の中での大繁殖につながっていきます。今回の実験では冬から春にかけての繁殖が顕著でした。気温が低下する秋季だからと注意を怠らないで、開封した粉製品は密封して冷蔵庫で保存すると良いでしょう。




お好み焼粉やホットケーキミックスで見つかったコナヒョウヒダニ

【関連キーワード】 コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae),アレルゲン,アナフィラキシーショック



(2015.10.2更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は10月16日(金)を予定しています。

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室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】