(4)ヒトの常在菌、黄色ブドウ球菌による食中毒に注意!

  平成12年夏季に近畿地方を中心に発生した「雪印集団食中毒事件」は、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス)を原因とする食中毒で、被害者数14,780人を出した戦後最大の集団食中毒事件でした。厚生労働省の過去5年間のデータによると、黄色ブドウ球菌による食中毒は8月に発生のピークを迎えます(表)。細菌が増殖しやすい時期であることに加えて、夏バテで体力が落ちていることが原因ですが、特に8月後半から9月後半の今の季節が要注意です。


 黄色ブドウ球菌は、1ミクロンくらいの球形で、顕微鏡観察するとブドウの房のように見えます(写真)。実は、健康な人の皮膚表面、鼻腔内、外耳道に普通に存在する常在菌で、人が生活する環境下にも普通に存在しています。それではなぜ、食中毒を引き起こすかというと、この細菌が増殖するときに産生されるエンテロトキシンという耐熱性の毒素が原因です。多くの場合、調理者の手指から黄色ブドウ球菌が食品に取り込まれ、増殖過程で毒素が産生され、この毒素を食品とともに食べることで発症します。



 この食中毒は潜伏期が短く、汚染された食品を食べてから2〜3時間(毒素量が多い時には数10分)で発症します。激しい嘔吐、腹痛、下痢が主な症状で、高熱は出ません。

 この毒素は、100℃で30分加熱しても分解しないことから、食品中で黄色ブドウ球菌が増殖してしまった場合、加熱して殺菌したとしても、毒素は分解されず食品中に残ったままになります。「雪印集団食中毒事件」の被害者らも、製品に混入した毒素を摂取したことが原因でした。このような食中毒を「毒素型食中毒」と呼びます。


 月別黄色ブドウ球菌食中毒件数(2010〜2014年の集計:厚生労働省統計データより)

  予防対策としては、次の3つが挙げられます。
1)手指などに切り傷(化膿)のある人は、食品に直接触れたり、素手による調理をしないこと
2)手指の洗浄・消毒を十分に行うこと
3)冷蔵保存を過信しないで、直ぐに食べない食品や材料は冷凍すること


 食中毒事故はこれからが本番と考えて、お弁当作りなどは十分注意してください。


【関連キーワード】 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus


(2015.8.21更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は9月4日(金)を予定しています。

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