(3)夏の終わりの蚊にご用心

  昨年、70年ぶりに日本で流行感染したデング熱は、東南アジア、アフリカ、北米では現在でも人々を苦しめている蚊によって媒介される感染症です。世界保健機関(WHO)が今年7月2日付で公表したデング熱患者のデータによると、中国では5月に26人、フィリピンでは1〜5月の間に死者86人を含む28,600人が報告されています。頭や筋肉の激しい痛みの症状からスペイン語の「硬直の意味」や「ダンディ熱」(患者の歩く姿が気取ったように見える)がデング熱の語源とされています。


■媒介蚊:ヒトスジシマカの特徴

 国内の住宅周辺で普通に生息する蚊は主に、①ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、②アカイエカ(Culex pipiens pallens)、③ チカイエカ(Culex pipiens molestus)の3種で、媒介蚊となるのはヒトスジシマカだけです(表)。ヒトスジシマカに刺されなければデング熱に感染することはありませんが、身近に生息する蚊であるため、この蚊の性質を良く理解した上で、効果的な対策を日常生活に取り入れる必要があります。(1)ヒトスジシマカは30℃を超える真夏では活動が鈍く、22〜26℃の少し涼しい温度の明け方や夕暮れ時に活動が活発になります。夏の終わりの庭仕事は要注意。長袖、長ズボンの着用を心がけましょう。(2)植物の茂みや植木鉢の陰などでヒトを待ち伏せして、近づくヒトから素早く吸血します。
 ヒトスジシマカは比較的寒さに弱いのですが、気候変動に伴い都市部の排水溝や雨水升では1年を通して幼虫(ボウフラ)の発生が見られます。日本衛生動物学会では、10年以上前から「国内でデング熱がいつ流行してもおかしくない」と警鐘を鳴らしていました。


吸血中のヒトスジシマカ

■忌避成分ディート

 肌の露出する箇所には、忌避効果のある虫よけ剤を塗布しましょう。忌避効果のある成分は、「ディート」ですが、含有量12%の医薬品の虫よけ剤がお奨めです。
 人や動物の呼吸や発汗時に発生する炭酸ガスを感知します。ディートは蚊の触角に作用して、炭酸ガスを感知できなくさせる作用があります。つまり、蚊から見ると「透明人間」のようにどこにいるか判らなくなります。ディートは医薬品として安全性が確認されている薬品ですが、「慢性的に利用しない」「乳幼児に使用しない」など、虫よけ剤に記載された用法・容量をきちんと守って適切に使用するようにしましょう。
 昨年は9月に入り涼しくなってから患者数が急増しました。夏バテで、ヒトの抵抗力が低下する時期でもあります。ヒトスジシマカは10月中旬まで庭先で活動していますので、ご用心ください。


国内の住宅周辺に生息する蚊
種 類 体 色 生息場所
(近年、生息場所の違いは
曖昧になりつつある)
活動範囲 デング熱
ウイルス
媒介性
ヒトスジシマカ
Aedes albopictus
黒色で白斑 庭先、公園の植栽の陰など、
薄暗い場所
狭い
待ち伏せ型
あ り
アカイエカ
Culex pipiens pallens
淡赤褐色 主に屋外の汚水升・雨水升。
河川、湖、池の周辺
広い
長距離飛翔型
な し
チカイエカ
Culex pipiens molestus
淡赤褐色 主にビルの地下雨水升や
地下鉄構内
狭い
生息場所周辺
飛翔型
な し

(2015.8.7更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は8月21日(金)を予定しています。

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