(2)ジャムに生える乾燥に強いカビ

 市販のジャムは「甘さ控えめ」が主流のようですが、自家製ジャムでは尚更、砂糖を控えめにして作ることが多いのではないでしょうか。実はこれは、保存食でもあるジャムにカビが生えるチャンスを与えてしまっているのです。


 カビが繁殖するためには「25〜30℃の温度、水分、栄養素、空気」が必須です。ジャムを作る際に使う「砂糖」には食品中の水分を吸収して、細菌やカビの繁殖を抑制する効果があります。ジャムは果物に砂糖をたくさん加えて、微生物が繁殖できなくなるまで水分量を減らすことで、保存性が高くなります。ジャムの中の砂糖の量は糖度(%)で示されていて、古くからある保存食としてのジャムでは、70%ほどになります。
「甘さ控えめ」の市販のジャムの糖度は50%前後がほとんどで、雑誌などのレシピではより低糖度になるものを推奨しています。ジャムの糖度が低くなると、吸収される水分が減り、微生物が利用できる水分が増えてしまうため、カビが繁殖するリスクを高めることになります。


 では、どの程度の糖度からカビが生えてしまうのでしょうか。ジャムに生えるカビは、「耐乾性カビ」や「好乾性カビ」と呼ばれるカビの仲間で、好乾性カビ代表種である、コウジカビの一種<Aspergillus restrictus>やアズキイロカビ<Waremia sebii>は、より低水分環境で胞子を発芽させて菌糸を伸ばすことができるため、糖度65%のジャムでも繁殖することができます(写真)。また、耐乾性や好乾性カビは家庭のハウスダスト中に普通に存在しているため、スプーンや空気を介してジャムの中に入ってしまいます。


どの程度の糖度からカビが生えてしまうのかを調べた結果

写真1 糖度65%のイチゴジャムに生えたアスペルギルス・レストリクタス(左)とワレミア・セビ(中央)顕微鏡写真 写真2 アスペルギルス・レストリクタスの顕微鏡写真

 市販のジャムは瓶の中を真空にして密封(脱気)した後、高温高圧で滅菌しているため、未開封であれば常温で保存することができます。家庭では、冷蔵庫で保存するのが普通ですが、3週間程度で食べきれない分は、小分けにして、冷凍保存することをお奨めします。もし、少しでもカビが生えてしまったら、迷わず廃棄してください。

(2015.7.24更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は8月7日(金)を予定しています。

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室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】