(10)衣類用洗剤に含まれる酵素の働きについて

 粉末洗剤や液体洗剤など多くの衣類用洗剤には、汚れを落としやすくするため、さまざまな成分が補助剤として配合されていますが、そのなかの1つに酵素があります。いったいどのような効果があるのでしょうか? 第10回は“衣類用洗剤での酵素の働き”について解説します。

●汚れ落としに欠かせない“酵素”
 酵素はタンパク質の一種で、“目的の物質にだけ作用する”という特異性があります。衣類用洗剤では主にタンパク質に働く「プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)」、皮脂や食品由来の脂質に働く「リパーゼ(脂質分解酵素)」、お米などのでんぷんに働く「アミラーゼ(でんぷん分解酵素)」、繊維の隙間に作用し、汚れを落としやすくする「セルラーゼ(セルロース分解酵素)」の4種類が用いられ、洗剤メーカー各社は汚れの種類に応じて酵素の配合に工夫をしています。

図1 酵素と汚れの種類

 酵素成分が配合されることで、洗剤主成分の界面活性剤のみでは落ちにくいタンパク質、でんぷん、脂質汚れなどを分解して落としやすくします。例えば界面活性剤による乳化・分散作用(油汚れなど水と混ざりにくいものの表面を包み、水中に混ざりやすくする)では、繊維内部まで染み込んだ汚れはなかなか落ちません。それに対し、酵素は汚れを細かく分解して落としやすくしたり、繊維の内部まで染み込んだ汚れに働くことで黄ばみや黒ずみ汚れを防ぎ、衣類本来の色合いを保ちます。


図2 界面活性剤と酵素の汚れに対する働きの違い


●効果を高める条件は? “温度と時間”との関係

  洗浄効果を高めるには、使用するときの温度が大切です。酵素はタンパク質のため、温度が高すぎると失活し、逆に低すぎると働きが鈍くなります。そのため、市販の洗剤に配合される酵素は、水道水をそのまま使っても効果が出るように工夫されています。ですが、40℃程度のぬるま湯が酵素の働きには有効です。また、酵素に接する時間が長いほど効果を発揮するので、40℃程度のぬるま湯で浸け置きしてから洗浄するほうがより効果的です。


●ウール、シルクの浸け置きには要注意

 一方で、浸け置き洗いは繊維の種類によって注意が必要です。例えば、ウール(毛)やシルク(絹)などの動物性繊維は、「プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)」により繊維の主成分のタンパク質が分解され、生地にダメージを与える原因になります。特にブラウスやショールなどに使われる薄地のシルク(シフォンやシルクオーガンジー)では、生地やせを引き起こし、風合いが変化するので浸け置き洗いは控えましょう。

図3 酵素によるウール、シルクへの影響


 酵素の働きを最大限に活かし、大切な衣類を守るためにも、洗剤に表示されている用法、用量を確認して正しく使うことが重要です。

(2017.09.01)

生活科学研究室