フジテレビ商品研究所

商品研究レポート

食器洗い乾燥機で洗えるモノ洗えないモノ

~高級磁器を500回洗ってみた~

 食器洗い乾燥機(以下、食洗機)は家事の労働時間を確実に減らしてくれるので、重宝して使用されている方が多いと思われます。しかし、各メーカーの取扱説明書には洗えないモノとして例示されている食器類があるので注意が必要です。

洗えない食器
漆塗りや上絵付けの陶磁器

 食洗機で洗えない食器の代表的なモノは漆塗りや上絵付け陶磁器等の高級食器です。上絵付け磁器の代表としては有田焼がありますが、近年では海外への輸出も視野に入れて食洗機対応という製品もあるようです。
 今回は高級磁器として有名な有田焼の中から、下絵しかない磁器ならば食洗機で洗っても問題ないのか、また上絵付けの磁器は実際に500回洗うとどうなるかを繰り返し洗浄して確認いたしました。今回テストした磁器は下記の10種類(4社)の磁器です。

表1 評価に使用した有田焼食器の一覧

 食器番号1、2、5、6、7、8は上絵付け磁器と思われ、食器番号3は白磁、食器番号4は下絵のみの磁器、食器番号9、10は釉薬(ゆうやく)に色付けされているのではと思われます。
 さて、下絵付けとか上絵付けとはどういうことでしょうか。何故、上絵付けの陶磁器は洗えないのでしょうか?

上絵付け磁器とは

 上絵付けの陶磁器が食洗機で洗えない理由は制作工程を追ってみると分かります。
1)素焼きの状態の素地に下絵が絵の具で付けられます。
2)その後、全体に釉薬を掛けて1300℃程度の高温で焼成されます。この際に釉薬は透明なガラス質となり下絵を保護すると共に、水を通さずに汚れにくくなります。
3)上絵付けは、このガラス質の上へ低温で溶ける絵の具で絵付けをして、更に低温(7~800℃)で焼成したものです。低温での焼成は色の発色が良いのが特徴です。

 従って上絵はガラス質の上にあり、食器の表面に露出した状態で保護されていないので洗浄には注意を要します。特に食洗機の洗剤(アルカリ性)で高温洗浄すると変色や剥がれてしまうことが予想されます。

 今回、使用した食洗機はミーレのビルトイン型の製品です。庫内にはギッシリと食器を並べた状態で500回の繰り返し洗浄を行いました。


表2 使用した食洗機の仕様

写真1 庫内の配置

500回洗った結果

 上絵付けが施されていない食器番号3、4、9、10は実際に500回の洗浄を繰り返しても、予想通りに初期の状態と区別がつきませんでした。食器番号9、10の彩色は釉薬に色が付けられていると思われます。

表3−1 食器番号3の洗浄後

表3−2 食器番号4の洗浄後

表3−3 食器番号9の洗浄後

表3−4 食器番号10の洗浄後

 次に食器番号2、8に関してですが、こちらは500回の洗浄後でも、殆ど変化に気付かない程度でした。食器番号2に関しては、未洗浄のものと並べてみれば風合いが少し変わっているかなと感じます。しかし、十分に食器としての彩りを保っています。食器番号8に関しては更に風合いの変化が少なかったのです。両方とも上絵付けを用いられていると思われますが、何か工夫されているようです。
 一方で食器番号1、5、6、7に関しては500回の洗浄を待たずに退色してしまいました。特に金色の彩色に関しては例外無く食洗機で洗えないという結果になりました。50~200回の洗浄で彩色が剥げ落ちて白い下地が現れました。


表4−1 食器番号2の洗浄後

表4−2 食器番号8の洗浄後

洗える上絵付け磁器と洗えない上絵付け磁器表面状態の違い

 それぞれ釉薬が形成したガラス質に保護されない状態は見た目にもハッキリ分かりますが、マイクロスコープで表面の詳しい状態を拡大して確認してみました。洗浄で退色する食器の場合は、洗浄前後での表面状態の変化が表5の様にハッキリと分かりました。
 表5を見て頂くと未洗浄の状態は表面がゴツゴツと粗い状態であることが分かります。これが食洗機で50回洗った後には表面がかなり平滑になっている様子が分かります。高温のアルカリ洗剤で金色の絵の具が溶かされていると推察されます。200回の洗浄では完全に溶かされて白い下地が出ています。
 上絵付けされた食器が洗えないリストにあるのは一般的に上絵付けの絵の具がアルカリ洗剤に対して弱いからと分かります。

表5 食器番号6の表面状態(100倍)

 食器番号8の表面状態の変化を表6に示します。


表6 食器番号8の表面状態(40倍)


 こちらの表面もガラス質の様に平滑ではなく、表面に絵の具が盛られている様子が分かります。しかし、その表面は粗くはなくてガラス質を思わせます。黒い紋様もプラチナの地の部分も上絵付けの絵の具でも表面がガラス質になり、アルカリ洗剤に対して強いものが使われていると思われます。


◇加速試験


 今回の結果から500回までの洗浄で変化するサンプルが得られました。(途中の50、100、200、300、400回のサンプルも保存してあります。)実際に食洗機で繰り返し500回の洗浄を行うのは手間と時間が大変に係ります。今後、食洗機による洗浄の耐久性を短時間で評価する試験装置・試験法を今回の結果から開発することを模索しています。


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(2021.4.27 生活科学研究室)

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