フジテレビ商品研究所

商品研究レポート

インク特性の違いで書き心地が変わる!?

〜ボールペンの性能を調査〜

 「スラスラ書ける」「なめらかな書き心地」といった機能性に工夫を凝らしたボールペンが売られています。今回はインクの特性が異なるものを選び、書き味を比較してみました。

ボールペンの種類“油性・水性・ゲルインク”

 ボールペンの種類はインク特性の違いにより、大きく分けて次の3つに分けられます(表1)。1つ目は「油性インク」と呼ばれ、色素や添加剤などを溶かすときに有機溶剤が使われているタイプ(試験品A、B、C)。一般的にインクは高粘度で書き味はやや重たい傾向にありますが、にじみにくく、複写をする場合などの強い筆圧に適しているといわれています。近頃では、従来の高粘度から低粘度に改良し、書き味がなめらかで使いやすいよう工夫を凝らした商品もみられます。2つ目は材料を溶かす際、有機溶剤ではなく、水が使われる「水性インク」(試験品D、E、F)。油性と比べてインクの粘度が低いため、書き味がなめらかで、軽い筆圧で書ける傾向にあります。しかし、にじみやすく、インクが紙の裏まで浸透してしまうなどの課題もあります。その課題を解決したのが3つ目の「ゲルインク注1」(試験品G、H、I)で、使われる溶剤のベースは水性ですが、特殊な成分を配合。力をかければ粘度が下がり、逆に力をかけるのを止めるとゲル化する性質があります。そのため、なめらかな書き味を実現させつつ、紙ににじみにくいという油性と水性の両方の良いところをもちあわせています。このようにインク特性の違いは書き味に大きく関わり、特に油性ボールペンでは、インクが高粘度でペン先のボールの動きに影響。その結果、他と比べて書き味がやや重たい傾向にあるといわれています。そこで一般的にいわれているインク特性による書き味の違いの実態を調べるため、油性、水性、ゲルインク計3つの特性ごとにボールペンを選択。紙に書いた際に指につたわる振動の強さを測定し、その傾向を調べてみました。また、試験に使用したボールペンは一般的に広く普及している0.5~1.0mmのボール径から0.5mmのものに統一して行いました(表2)。


表1 一般的な油性・水性・ゲルインクの違い

書くときに指につたわる振動を測定

 人差し指に触覚を数値化するセンサーをつけ、紙に書くときに指につたわる振動を測定し、振動波形の様子をそれぞれ観察してみました(図1 測定機器:ゆびレコーダー/テック技販)。 試験には一般的な用紙 (坪量67g/m2、厚さ90μm、上質紙)を使用。測定は試験品1点につき、10回ずつ測定して平均値を算出しました。


表2 試験品


図1 測定の様子

 ここでは例として試験品AとEの波形を示します(図2)。グラフは横軸に周波数、縦軸に振動の強さをとり、1秒間ごとに指につたわる振動の強さを表しています。結果、およそ600Hzまでの周波数の範囲で筆記による振動の強弱がみられ、それ以上になると振動の強さの強弱にあまり変化がみられない傾向でした。これはインクの特性に関わらず、全ての試験品にて同様の傾向で、振動がみられる周波数の範囲に大きな違いはみられない結果となりました注2。


図2 指につたわる振動波形


同じ油性タイプでも指につたわる振動の強さに違いが

 次に試験品ごとの最大振動を比較してみました。
結果、インクの粘性が低い水性タイプ(D、E、F)では全体的に振動の強さが小さい傾向がみられました。一方で、一般的に高粘度で書き味がやや重たいといわれる油性タイプ(A、B)でも水性、ゲルインクとあまり変わらない振動の強さを示しました(図3)。AとBでは油性タイプであるものの、インクの粘性を従来よりも低くするなど、メーカー独自の設計仕様が影響したものと推測されます注2。

図3 試験品ごとの指につたわる最大振動


油性タイプも書き心地がよいと感じる傾向に

 次に男女各3名の計6名にて官能評価を行いました。
試験は振動の強さを測定した際と同じ条件で実施。各試験品をランダムに使用してもらい、なめらかさ、書きやすさについて5段階で評価してもらいました。また、評価は1人それぞれ2回、1回目と2回目は日を空けて行いました。結果、従来からいわれているように、油性タイプのCでは書き味が重く、なめらかさに欠けると感じる人が多い結果でした。一方で、粘性を低くし、仕様に工夫を凝らしたA、Bでは多くの人が水性、ゲルインクと比べて遜色なく、なめらかで書きやすいと回答。従来からいわれている重く感じる書き味についてメーカーの工夫が反映された結果が確認できました(図4)。

図4 官能評価


 今回使用したボールペンだけでもさまざまな特徴があり、インクの粘性だけでなく、乾燥性を改善し、書いた直後に手が触れても汚れにくくするなど、より使い勝手がよくなるような工夫がみられます。実際に試してお気に入りの1本を選んでみてはいかがでしょうか。

注1 一般的名称として広く知られていることから、今回は「インキ」「ゲルインキ」ではなく「インク」「ゲルインク」と表記しました。
注2 結果はあくまでも今回の条件に限ったものですので、メーカーの各種公表内容と必ずしも一致しない場合があります。

インク特性の違いで書き心地が変わる!?/pdfレポートをダウンロードする

(2021.4.1 生活科学研究室)

▲PageTop