フジテレビ商品研究所

今までの研究レポート

トースター10機種の比較試験 ②

トーストの焼き色比較



 前号では、トースター10機種についてトーストの焼き色を評価しました。今回は、前回と同じ10機種、同じ食パンを用い、物性測定と官能評価を行って食感を中心に調べてみました。

トースト


重量減少率と物性測定値

 トースト表面のサクサク感、中身のしっとり感などの食感を評価するために重量と物性を計測し、官能評価結果とともに左頁の表にまとめました。
 焼いた後の重量減少率は、D,E,H,Fの順に大きく、片面があまり焼けていないJ、蒸気を加えるA,B、その他C,I,Gが順に小さい結果になりました。
 物性については、テクスチャーアナライザEZTestシリーズ(島津製作所、上写真)を用い、ロードセル容量100N、圧縮速度20㎜/min、クリアランス10㎜の条件で、トーストの中央に歯型押し棒Bを押し当てて測定しました。1機種ごとに表/濃面測定用に7枚、裏/薄面用に7枚のトーストを焼き、測定値の上下の値を除いた5枚について平均を求めました。

 トーストに押し棒を当てると、図1の左グラフのように、aの試験力が加わるまでは割れずに沈み込みますが、それ以上の力が加わると表面に亀裂が入り、押し棒に対する応力が急に減少する「破断点」が明確になります。対して、生の食パンの場合は、図1の右のグラフのように、押し進めても表面は割れずに圧縮されるだけで、破断点は生じません。つまり、この破断曲線は、破断点までの試験力a値が大きいほど硬く、破断までの押し棒のストロークb値が長い、あるいは破断点が生じない場合は生の食パンに近い特徴をもっていることを示します。

 各機種のトースト表/濃面と裏/薄面のa値平均値を比較すると、E,F,H,Dの順で大きい=硬いグループ、Bの小さい=軟らかい、その他の中程度の硬さグループに分かれました。また、表/濃面と裏/薄面のa値の差をみると、Jを除くポップアップ式とマイコン搭載のC,Dで差が小さく、トースト両面の焼きムラが小さいことを示していました。一方、裏/薄面のb値を比較すると、A,B,Jは破断点がなく、生に近い特徴をもっていることがわかりました。
 次に、表/濃面と裏/薄面のa値平均値と重量減少率(=水分蒸散率)の平均値との関係(図2)をみると、a値と重量減少率がともに高いE,F,D,Hグループ、a値が低く重量減少率が中程度のB、a値と重量減少率がともに中程度のその他グループに分かれました。また、重量減少率6・5〜7・5%を境に、トーストの硬さに差が生じる傾向が見られました

図1:トーストと生食パンの破断曲線

図2:重量減少率と破断試験力

表:10種トースターと物性測定結果と官能評価

官能評価

 食べた時の食感を中心に、研究員3名で各トーストについて3回繰り返し、食味を評価しました。トーストを十文字に4分割し、耳の角の対面=トースト全体の中心部分についてFを基準に、サクサク感としっとり感、全体の焼け具合を比較しました。

 その結果、A,B,Jはサクサク感がなく、焼き具合が不足傾向であると評価され、非常に特徴的であることがわかりました。この3種は、物性測定で表/濃面の破断曲線に明確な破断点がありながら、裏/薄面には破断点がありませんでした。このことは、片面が硬めに焼けていても、残りの片面の焼き加減が甘いと、食べたときにサクサク感を感じにくいことを示していると思われます。

 今回のトーストは、人体に悪影響を及ぼすアクリルアミドの生成を抑えるため、農林水産省が提唱する「部分的に軽い焼き色」(図3の仕上がり2)を基準にし、薄めの焼き色に設定しました。そのため、10種のトースターで焼いたトーストすべてに対して、やや焼き不足であるように感じました。中でも加熱時に加水するA,Bは、通常、イメージするトーストとは違い、しっとり感が際立っていました。

 2スロットのJは片面が焼き不足と感じられました。これは、ひとつのスロットだけで焼いたので、残りの空のスロットの熱が対面するトーストの片面だけに当たり、焼き上がりのバランスが崩れたためと考えられます。その他のポップアップ式は両面の硬さの差が小さく、均一に仕上がっていたと評価しました。
 前号では焼き色と焼きムラを評価し、単機能Fと1スロットのGを焼き色の差が小さい、過熱水蒸気発生のBと単機能のEを焼き色の差が大きいと判定しました。しかし、官能評価では、A,B,J以外、色の違いほどの差を感じませんでした。

図3:トーストの焼き色とアクリルアミド濃度の関係

おいしいトーストに仕上げる工

 トーストには、焼くからこそ生じるサクサク感や香ばしさ、甘さ、小麦粉の濃い風味など、独特のおいしさがあります。しかし、どんな食パンでも、どのトースターでも、アクリルアミドを考慮すると焼き不足になり、トーストらしいおいしさを引き出しにくい傾向は否めません。
 その原因のひとつとして、デンプンの老化がかかわっていると思われます。小麦や米などの生デンプンに水を加えて加熱すると、デンプンの固い結晶構造がゆるみ、デンプン分解酵素アミラーゼなどで分解されやすいαデンプンになります。α化=糊化したデンプンは口の中で効率よく糖に分解され、甘みを感じさせてくれます。
 ところが、糊化したデンプンから水分が抜ける=老化すると、デンプンは硬くなり、酵素で分解されにくい状態になります。パンであれば、焼き上がった直後から少しずつ老化は始まり、やがてボソッとした硬い食感、食べてもすぐに甘みを感じない状態へと変化してしまいます。

 しかし、老化したデンプンも再加熱することでデンプンが再び糊化し、おいしさは戻ります。これが、焼くからこそ生じるトーストのおいしさの理由のひとつであると考えられます。従って、老化デンプンの再加熱= トースターでの加熱が不十分では、老化したままのデンプンが多いことになります。

 そこで、トーストのなんとなく生焼け感が気になる方にお勧めしたいのが、トースト前の電子レンジ加熱です。1枚につき10〜20秒加熱し、ほんのり温めてからトーストすると、表面の焼き色が控えめでも中まで十分に加熱することができ、トーストらしい軽やかな食感と小麦粉のおいしさを楽しめます。この電子レンジよる予備加熱の効果は、4枚切りなどの厚切り食パンでより実感できます。厚切りトーストがお好みの方は、ぜひ一度、お試しください。

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(2019.4.25 食品料理部門)

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