フジテレビ商品研究所

今までの研究レポート

涼しく調理するコツ

涼しく調理するコツ

蒸し暑い季節は、喉越しのよい麺料理を食べたくなるものだが、麺のゆで鍋から立ち昇る湯気と熱気を思い浮かべると、作る気が失せてしまうことも…。
そこで、光熱費を節約したい主婦の常識「蓋の効用」を、「調理中に感じる加熱温度」という視点から調べてみた。

研究目的

鍋やフライパンなどで調理をする際、蓋をすることで熱効率が高まることから、蓋の有無によって人が受ける熱量に差が生じると考えられる。また、開放系でガスを燃焼させるコンロと密閉系でガスを燃焼させる魚焼き用グリルでも、人が受ける熱量に違いがあるであろう。
放射熱測定用マネキンを使ってサーモビュアと放射温度計で表面温度を測定し、「焼く」「ゆでる」などの調理を行なったときの熱の伝わり方を調べ、涼しく調理する方法を検討した。同時に、ガス流量を測定してコストを算出し、省エネ効果も比較した。

試験機器

ガス器具 東京ガスピピッとコンロ(HR-TP2A-G6)
サーモビュア NEC製F30W
放射温度計 日置電機株式会社製 FT3700
ガス流量計 株式会社シナガワ製 ガス流量計DC-1A

試験方法

1.焼く
表面の焦げの状態がわかりやすいハンペンを用い、①フライパンで蓋をせずに焼く、② 蓋をして焼く、③ 両面タイプの魚焼きグリルで焼く、の3条件を比較した。条件の詳細は表1の通りである。

表1 : 焼き実験条件

調理方法 火力 加熱時間
(調理時間)
調理手順
コンロ 蓋なし ダイヤル4
(中強火)
5分 フライパンを1分温め、ハンペンを3分焼き、裏返して1分焼く
蓋あり
グリル ダイヤル5
(強火)
5分 焼き網にのせ、予熱せずに焼く

2.ゆでる
乾麺の中でも比較的ゆで時間が長いロングパスタのうち、最も一般的なスパゲティを試料とし、ゆで調理中の攪拌作業を省略できるように、半分に折って使用した。

パスタ(試料)

鍋に水1000g、塩小さじ1(6g)を入れて沸騰させ、スパゲティ(直径1.6㎜、標準ゆで時間7分)を入れ、①蓋をせずにゆでる「普通調理」、②蓋をして火を止め、余熱を利用する「余熱調理」の2条件で比較した。条件の詳細は表2の通りである。

表2 : ゆで実験条件

調理方法 火力 加熱時間 調理時間 調理手順
普通調理 ダイヤル5(強火) 12分 12分 蓋をして湯を沸かし(5分)、スパゲティを入れて蓋をせずに7分(標準時間)ゆでる
余熱調理 ダイヤル5(強火) 6分 13分 蓋をして湯を沸かし(5分)、スパゲティを入れて蓋をせずに1分ゆで、火を止めて蓋をし、7分おく

試験項目

1.サーモビュア
調理開始から終了まで、マネキンをガス台から20cm離して正面に立たせ、終了時の表面温度をサーモビュアで撮影した。

2.表面温度
放射温度計を使い、マネキンの胸、腹、下腹の3カ所の温度を測定した。

マネキン

3.コスト
ガス消費量を測定し、133.99円/m3で換算してコストを算出した。

測定結果

1.焼く
1)表面温度測定結果
コンロのフライパン調理の「蓋なし」加熱は、表面温度が上昇した範囲が広い。ガス台より下の下腹は27℃と低かったが、胸と腹の温度は32℃とかなり高くなった。
「蓋あり」加熱は、「蓋なし」加熱よりも表面温度の上昇が抑えられた。ガス火に近い腹は32℃になったが、胸は29℃と「蓋なし」加熱よりも低かった。
一方、グリル調理ではグリルに近い腹と下腹は29℃になったが、胸は27℃と低く、いずれのコンロ調理よりも温度変化が少なかった。
測定結果の詳細は表3にまとめた。
なお、「蓋あり」加熱では、加熱終了の30秒前にコンロの温度センサーが作動し、自動的にダイヤル1に変更された。「蓋なし」加熱では、加熱終了の15秒前に自動的にダイヤル1に変更された。

表3:焼き実験測定結果

2)焼き加減
各調理方法で焼いたハンペンの焼き上がり状態は、表4の通りである。
フライパン調理では「蓋あり」のものが「蓋なし」よりも焦げ色がやや濃く、効率よく調理できたことを確認できた。
グリル調理で加熱したハンペンは、フライパン調理品に比べ、表面の加熱ムラはなかったが、裏面にはほとんど焦げ色がつかなかった。

表4:ハンペンの焼き上がり

3)ガス消費量とコスト
ガス消費量測定2回の平均は表5の通りである。
加熱時間は同じだが、コンロ加熱よりもグリル加熱の方がガス消費量は多く、若干、コストが高めだった。

表5 : 焼き実験のガス消費量とコスト

調理方法 ガス消費量(m3 コスト(円)
コンロ 蓋なし 0.013998 1.88
蓋あり 0.013782 1.85
グリル 0.016380 2.19

2.ゆでる
1)表面温度測定結果
結果は表6の通りである。
加熱終了時では、温度が上昇した範囲に大きな差はなかったが、調理終了時では火を止めてから時間がたっている余熱料理が、普通調理よりも明らかに温度上昇が抑えられていた。
普通調理は、胸が30℃、腹が34℃と非常に高くなったが、余熱調理は胸、腹、腹とも27℃と低く、普通調理と余熱調理の温度差は最大で7℃であった。

表6:ゆで実験測定結果

2)ガス消費量とコスト
温度測定2回の平均は表7の通りである。
加熱時間に比例し、余熱調理のコストは普通調理の半分であった。

表7 : ゆで実験のガス消費量とコスト

調理方法 ガス消費量(m3 コスト(円)
普通調理 0.053235 7.13
余熱調理 0.026717 3.58

まとめ

今回の実験を通して確認できた「涼しく調理をするコツ」を下記にまとめた。

1)蓋を利用する

麺類をゆでるときなど鍋で湯を沸かす場合、大部分の人が蓋を利用する。これは、蓋を使うことで熱や水蒸気が逃げるのを防ぎ、効率よく加熱できるためである。しかし、加熱時間が短いと、蓋をしないことも少なくない。
だが今回、短時間であっても蓋をすることで熱効率が高まり、調理者の体表面温度の上昇が抑えられることが、フライパン調理によるハンペンの焼け具合とマネキンの表面温度測定結果から確認できた。
蒸気を逃してカリッと焼き上げるムニエルや、煮汁を煮詰めることで美味しくなる煮物など、蓋をすることで美味しさが損なわれる料理もある。しかし、それ以外の料理では、加熱時間が短い場合でも、調理者が感じる熱を抑えたり、キッチンの温度や湿度の上昇を防ぐには、蓋が有効である。

2)グリルを利用する

加熱時間が同じであれば、密閉系でガスを燃焼させる魚焼き用グリルは、開放系でガスを燃焼させるコンロよりも発散する熱はかなり少なかった。
グリルは「魚焼き用」という名前から「魚を焼くための調理器具」と限定して考えがちだが、フライパンやオーブントースターを使う肉や野菜などの焼き料理を、同じように作ることができる。また、別々の下味をつけた肉や魚、野菜などを同時に加熱することもできる。
両面焼きタイプと片面焼きタイプなど機種によって使い勝手が異なるため、さまざまな焼き料理に利用するには各家庭でひと工夫する必要はあるが、涼しく快適に調理するためには積極的に利用したい調理器具である。

3)余熱を利用する

沸いた湯の熱を蓋によって閉じ込める「余熱調理」で、スバゲティをゆでることができた。スパゲティよりも加熱時間が短い野菜なども、同様の方法で問題なく調理できると思われる。
蓋をせずにゆで調理をすると、蒸気とともに大量の熱が発散され、夏のキッチンを不快にする。また、必要な水の量が多いため、ガスの消費量も多い。
室温が高くて湯が冷めにくい夏であれば、保温調理器のような特別な道具を使わなくても、普通の鍋と蓋だけで十分な余熱ゆで調理ができる。余熱調理は、涼しく、かつコストを抑えることができる調理方法である。

(2013.6.27 食品料理部門)

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