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日本食品標準成分表(2020年版八訂)の
改訂でレシピの数値はかわる?

~複数レシピでエネルギーのシミュレーション~



 2020年12月25日に「日本食品標準成分表2020版(八訂)」が文部科学省から公表されました。5年に1度の改訂です。日本食品標準成分表(以下、成分表)には食品の標準的な成分値などが収載され、病院や学校給食、レストランでも活用されています。八訂に改訂された成分表の数値を使うとエネルギーにはどのくらい差がでるのか、実際のレシピを用いて検討しました。

料理写真


改訂のポイント

 020版(八訂)では下記が主な改訂ポイントです。
・冷凍やチルドなどで流通する調理済み食品の充実と調理に関する係数などを収載
・エネルギー算出方法の変更
・組成成分表の充実
・2015年版(七訂)以降に1年ごとに追加・変更されたデータ(2016~2019年追補)を全体的に反映



エネルギー算出方法の変更

 今回は改訂されたポイントのうち、エネルギーに注目しました。七訂でのエネルギーは、炭水化物、たんぱく質、脂質に各食品で決められた換算係数(またはアトウォーター係数)を乗じて加算した値を示していました(図1 七訂までのエネルギー算出方法)。
 しかし、これらの数値はヒトが体内で消化してエネルギーとして使える成分と使えない成分をまとめて計算をしているため、実態との乖離がありました。
 そこで、八訂では、より正確なエネルギー(エネルギーの科学的な確からしさ)を求めるために、ヒトが体内で使うことのできる炭水化物、たんぱく質、脂質などの食品成分の分析値に組成成分ごとのエネルギー換算係数を乗じて加算する方法に変更されました(図1 八訂のエネルギー算出方法)。
 八訂の分析・算出方法では、より実態に近い成分の分析値からエネルギーを算出していること、新規食品にも対応可能であること、国際的な整合性が取れることなど、より科学的な数値が計算できるように改訂されています。

図1 エネルギー算出方法の改訂



八訂は七訂よりもエネルギーは低く算出される傾向

 成分表に収載されている食品の可食部100g当たりでのエネルギーはどのくらいの変動があるのでしょうか。
 七訂と八訂では分析・算出方法が異なるので、本来は数値の比較はできませんが、今回は数値の変動傾向を把握するため、八訂のエネルギーから七訂のエネルギーを減じました。食品ごとにエネルギーのバラつきが大きいため、各食品群の中央値を算出しました。その結果、「砂糖及び甘味類」で7.0kcal、「きのこ類」で8.0kcal、「藻類」で5.0kcal八訂が七訂よりも高くなりました。主に糖類で構成される食品や乾物の収載が多い食品では、七訂よりも八訂のエネルギーが高い傾向を示しました。「果実類」の変動は少なく、その他は低い傾向でした。特に「魚介類」-11.0kcal、「肉類」-16.0kcal、「油脂類」-36.5kcalとなり、脂質やたんぱく質を多く含む食品群では七訂よりも低い傾向となりました。
 同じ食品群の中には生以外にも乾物や乾物を水で戻した食品なども含まれているため、数値が大きくバラつきました。
   これらから、八訂のエネルギーを用いると、見かけ上、七訂よりも低く算出される可能性があります。



実際のレシピでエネルギーを比較

 当社が制作管理している産経新聞掲載料理のレシピデータべースの中から約20年分を選択し、1食で食べる量が多い「主菜」と「主食」を抽出して主素材や主食ごとに分類しました。レシピを八訂と七訂で計算し、八訂エネルギーから七訂エネルギーを減じた数値をエネルギーの差(kcal)として素材ごとに平均しました。
 1つのレシピには複数の食材が含まれていること、主菜では最も多く使用されている食品を主素材としてデータベースから抽出することを前提としています。
 主菜の結果を図2に示しました。図のカッコ内の数値は使用したレシピ数を示し、エネルギーの差(kcal)は数値が0に近いほど七訂との差は小さく、0から離れるほど差は大きくなり、七訂よりも低い場合はマイナスになります。
 主菜ではレシピを肉類、魚介類、卵類、豆類に分けてエネルギーの差を算出しました。その結果、全ての食品で七訂よりも低い傾向になることがわかりました。肉類では牛肉、魚介類では青魚を主素材としたレシピで特に差が大きく、より低い値になりやすいことがわかりました(図2)。
 主菜のレシピでは主素材の使用量が最も多いため、総重量が増えると七訂との差がより大きくなると推測されます。

図2 主菜の主素材の違いによる八訂と七訂のエネルギーの差


 次に、主食の結果を図3に、主食の1食分当たりのエネルギーの差を表1に示しました。


図3 主食の八訂と七訂のエネルギーの差


表1 主食に使用する食品のエネルギーの差


 主食レシピのエネルギーの差は、中華麺レシピで七訂との差が大きくそばで小さい傾向でした。主食の結果は、表1の主食に使用する食品のエネルギーの差の傾向と類似していました。主食では麺類や米飯がレシピの多くを占めるため、量が増えればエネルギーの差は大きくなると考えられます。
 しかし、丼やカレーは肉類やルーなど脂質やたんぱく質を多く含む食品と合わせて食べるため、他の食品のエネルギーが影響して麺類と異なる傾向になると考えられます。
 また、主食や主菜では、八訂エネルギーが七訂よりも高い「きのこ類」や「藻類」などが含まれていても使用量が少ないため、エネルギーへの影響は小さいと推測されます。



まとめ

 今回、実際のレシピを八訂の数値を使用してエネルギーを検討してみたところ、全体的に七訂よりも低い値になる傾向となりました。今後、料理雑誌などで見かけるエネルギーも八訂で計算されている場合は見かけ上、レシピのエネルギーが低く示される可能性があります。
 成分表の値は目安であり、食品は季節や産地、飼料の配合、種類などによっても数値は大きく変動しますし、成分表に載っている数値は代表的な数値を示しているにすぎません。レシピのエネルギーが変わるのは、八訂での成分分析や計算方法の変更によるものです。変動したエネルギー分の食品や食事量を足したり引いたりする必要はありません。
 健康な人の場合は1つのレシピ、食品の数値の変動に驚かず、これらを考慮して雑誌のレシピやレストランメニューのエネルギーを参考にすると良いのではないでしょうか。

(2021.4.27 食品料理部門)

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