エフシージー総合研究所・フジテレビ商品研究所

研究レポート

寝具は相変わらずダニに汚染されている

―6年前のデータと比較して―

はじめに

 日本人にはアレルギー体質の人がとても多く、特にスギ花粉とダニ(ヒョウヒダニ類)が2大アレルゲンとして知られています。スギ花粉の発生源は山間部のスギ林であることから、発生源を除去することが難しく、私達はマスクの着用と薬の服用によって対策をします。一方、アレルゲンとなるダニの発生源は寝具やハウスダストです。つまり、ダニはスギ花粉と異なり、私達自身で発生源を制御することが可能です。当研究室ではダニ対策として掃除が大切であることを長年に渡って啓発してきました。ここ数年、家電業界や各種メディアでもダニ排除の重要性が発信され続けています。当研究室では継続的に住宅のダニ汚染状況を調査していますが、2020年に数十軒の住宅を調査する機会に恵まれました。そこで2014年に実施した際のデータと比較し、この6年間でどの程度ダニ汚染が改善されたのか考察してみました。

調査の方法

 東京近郊の住宅で使用されている寝具を調査しました。2014年は38軒、2020年は44軒を対象とし、いずれも7月~8月の期間内に実施しました。寝具の表面(180cm×90cm)を掃除機で約90秒吸引することでダストを捕集しました。掃除機はコードレスタイプを用いました(2014年はDyson製DC61、2020年はDyson製ダイソンデジタルスリムにそれぞれ統一)。そして、各住宅で捕集したダストに含まれるダニ数およびダニアレルゲンDer 1量を測定しました。

写真1 調査の様子

ヒョウヒダニの数は2020年調査の方が多かった

 喘息やアトピーの原因となるダニは、コナヒョウヒダニDermatophagoides farinaeおよびヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinusの2種類が知られています。本項ではこれら2種のダニを合計した「ヒョウヒダニ数」として示します。図1は各住宅のダスト1gに含まれていたヒョウヒダニ数をプロットしたものです。ダニ数は住宅によって大きく異なりますが、ほとんどの住宅からヒョウヒダニが検出されたことが判ります。検出されなかったのは2014・2020年の合計82軒のうち3軒のみで、一番多い住宅はダスト1gあたりのダニ数が3万頭に達しました。2014年の平均値は116(頭/g)、2020年の平均値は579(頭/g)で、なんと2020年の方が高値という結果になりました。図1の分布図を見ても2020年調査の方が全体的に高い様子が判ります。

図1 東京郊外の住宅における寝具のダニ数とダニアレルゲン量の分布

ダニアレルゲン量も危険水準のまま

 ダストのダニ汚染度を評価する手法として、ダニ数を測る他にアレルゲンDer 1(ダニの糞に含まれる蛋白質)の量を測る方法があります。図2には、各住宅のダスト1gに含まれるDer 1量(μg)をプロットしました。平均値は2014年が8.1(μg/g)、2020年が12.5(μg/g)であり、図1と同様の傾向であることから、2020年調査の方がダニが多いことは間違いないようです。

図2 寝具のダニアレルゲンDer 1量の度数分布


 寝具のダストに含まれるDer 1量と喘息罹患は密接な関係にあり、ダスト1gあたり2μgを超えるとダニアレルゲンに感作する(検査で陽性となる)とされ、10μgを超えると喘息を発症する危険性が高まることが知られています。図2は2020年の44軒のDer 1量を度数分布表にまとめました。これによると2μg/gを超える住宅は44軒中32軒(72.7%)と半数を越え、そのうち喘息発症の危険水準である10μg/gを超える住宅は18軒(40.9%)にも達しました。なんと現在も多くの日本人は苛烈なダニ汚染環境で睡眠していることが判ります。

結論としてダニ汚染は改善していない

 ダニの数には季節変動があり、その年の気候によってダニ数とピークのタイミングは若干変動します。2020年は梅雨が長く、ダニの増殖期である6・7月はほぼ毎日雨でした。ジメジメした室内はヒョウヒダニの好適環境であることから、いつもの年よりもダニが多く繁殖した可能性があります。また2020年は新型コロナウイルスの流行によって多くの人が家にいることが多かったので、いつもの年と室内環境に相違があったことがダニ数に影響しているのかもしれません。しかし、ダニ汚染度が危険水域に達しているのは事実で、前回調査の2014年から6年が経過しましたが、依然としてダニ汚染は思うように改善できていないと結論付けて良いでしょう。

写真2 寝具から見つかる主なヒョウダニ類


 ダニとアレルギーの関係は一般にも広く浸透しましたが、対策法は未だ根付いていないようです。ダニ対策には掃除機・洗濯機・乾燥機が有効ですが、特に寝具のケアが重要で、寝具をこまめに掃除機掛けすることで喘息患者の症状が改善することが判っています。当研究室の検証では、掃除機使用の頻度が多いほどダニ数が少なくなります。毛布やシーツは洗濯することでダニアレルゲンを洗い流すことが出来ます。また、乾燥機で60℃以上に加熱できるならば生き残ったダニを死滅させることが可能です。毛布はさらに仕上げの掃除機掛けをすると残ったダニ死骸を除去できるのでより良いです。掃除機には布団用ノズルが付属していますので利用すると寝具掃除がしやすくなります。また、床にも当然ダニが潜んでいるので床も週2回以上は掃除機掛けをすることが大切です。家具の下の隙間にもダストとダニが蓄積しているので、専用ノズルをつけて隙間の奥に隠れたダストも吸い取りましょう。
 次回の調査の際にはダニが減少していることを期待して、筆者は今後もダニ対策を啓発し続けていきます。

(2021.4.27 IPM研究室)

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