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洗濯機に生えるカビ

―クラドスポリウムが少ない? カビを除去するコツ―

 洗濯機は最もカビが生えやすい家電であり、洗濯機のカビ汚染に悩まされている消費者は多いのではないでしょうか。洗濯機がカビやすいのは、常に濡れていて、湿気が多いことが原因です。ところで洗濯機にはどのような種類のカビが生えやすいかご存知でしょうか?カビの名前に詳しい人ならクラドスポリウム(Cladpsporium)を想像するかもしれません。クラドスポリウムは和名を「クロカビ」と呼び文字通りタイル目地などに生える黒く見えるカビとして知られています。私達が生活の中で目にする黒いカビを調べてみるとクラドスポリウムであることが多いです。しかし、洗濯機の中には別の種類の黒カビがいるようです。今回は洗濯機に生えるカビを採取してどのようなカビが生息しているのか調べてみました。

調査の方法

 調査は2台の洗濯機で行いました。いずれも関東地方の住宅で使用されていた機体です。洗濯機を分解し、洗濯槽を取り外してみると、内部には沢山のカビが生えていました(写真1)。そこで、目視で多くの汚れが付着していた外槽とパルセーター(回転羽根)からカビを採取することにしました。外槽は上端から約20cmの位置を検査箇所として綿棒で100cm2の範囲を拭き取りました。パルセーターは表面積約50cm2を切り取りました。カビを拭き取った綿棒とパルセーターは生理食塩水でよく洗って懸濁液とし、PDA平板培地に懸濁液を接種しました。培地は25℃で7日間培養し、培地上に発育したカビを計数し、カビの種類を調べました。

写真1 カビが生えた洗濯機の外観

洗濯機に多いカビ

 には見つかったカビの種類を一覧にして、付着していたカビ数も併記しました(数値の単位は万cfu/100cm2)。2台の洗濯機からはエクソフィアラ(Exophiala)、オクロコニス(Ochroconis)、サイフロフォラ(Cyphellophora)、ヌフィア(Knufia)などが多く分離されました。これらを培地で培養してみると黒や暗褐色であることが判ります(写真2)。そのため、洗濯機に生えると見た目が黒くなるのです。

 特に数値が高かったのは洗濯機Aではエクソフィアラが4,100万cfu/100cm2、洗濯機Bではオクロコニスが2,200万cfu/100cm2でした(いずれもパルセーター)。文献によると、関西の住宅の洗濯機でも同様にエクソフィアラとオクロコニスが多く見つかっており、これらが主要なカビになった理由として、洗濯洗剤に含まれる非イオン界面活性剤に阻害されず発育可能であるため、と考察されています 註1)

 一方、界面活性剤に阻害されるクラドスポリウムは少ない傾向となり、今回の調査でも洗濯機Aではほとんど検出されず、洗濯機Bでも他より少ないことが判りました。カビに詳しい人は黒いカビを見かけたらクラドスポリウムと思いがちですが、洗濯機では他の種類のカビが黒く見えていることを示す結果です。
註1 濱田信夫:洗濯洗剤とカビ汚染、防菌防黴、34巻(2006)

表1:検出された主なカビの一覧と付着していた数

 写真2:洗濯機に付着していたカビを培養してみた結果

 写真3:洗濯機に付着していたカビを培養してみた結果

カビの除去には塩素系クリーナーがおすすめ!

 洗濯機のカビを除去する専用のクリーナーには、大きく分けて酸素系クリーナーと塩素系クリーナーの2種類が存在しています。それぞれ一長一短はありますが、著者は汚れをしっかり落とせる塩素系クリーナーをおすすめしています。今回は調査した2台の洗濯機を使って、2種類のクリーナーの汚れの落ち具合を検証したので併せてご紹介します。

 カビを調べた洗濯機を再び組み立て、洗濯機Aは酸素系クリーナーで、洗濯機Bは塩素系クリーナーで洗浄しました。洗浄時間などの条件はメーカーの取扱い説明書に則りました。洗浄後、再び同様のカビ検査を実施しました。

 グラフに洗浄前後のカビ数を示します。酸素系洗浄剤で洗浄した洗濯機Aでは、外槽が1,700万cfu ---> 820万cfuに減少し(48%残存)、パルセーターでは6,100万cfu ---> 510万cfuに減少しました(8%残存)。一方、塩素系洗浄剤で洗浄した洗濯機Bでは、洗浄後は外槽・パルセーターともに全くカビが検出されませんでした。見た目にも塩素系クリーナーの方がカビがよく除去された様子が判ります(写真3)。今回はサンプル数が少ないので統計検定が出来ませんが、著者の経験上、塩素系クリーナーの方がよくカビが落ちることは間違いないです。塩素系クリーナーは人体への有毒性や製品への腐食性の問題から敬遠されがちですが、すっきりとカビを落としたい場合は是非使用してみてはいかがでしょうか。

 グラフ:専用クリーナーで洗浄した前後のカビ数

洗濯機に生えるカビ―クラドスポリウムが少ない?カビを除去するコツ―

(2020.5.21 IPM研究室)

環境科学研究室では、「ダニ」「カビ」「微小昆虫類」「抗菌性評価」など
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  • 室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究
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  • 大学や国公立の研究機関との共同研究
  • 空気清浄機の除菌性能評価、抗菌素材の性能評価などの商品実用試験
  • 異物混入検査

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