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空気清浄機による浮遊カビの除去

―空気清浄機は効果があるの?―

 日本では室内空気の微生物汚染への関心が高く、多くの浮遊菌除去製品が流通しています。空気清浄機を初めとした浮遊菌除去製品の評価方法には、日本電気工業会規格JEM1467、室内環境学会標準法20110001号、日本空気清浄協会評価指針JACA No.50-2016 などが存在し、日本の市場に流通する各種製品はこれら規格試験の結果をもって浮遊菌除去のエビデンスとしています。いずれの規格試験も密閉された実験用ブース内で実施し、外的要因による浮遊菌増減への影響を極力排除するよう努めています。しかし、実際の住宅は実験用ブースに比較して密閉性が低く、家具等の障害物も存在し、また微生物の発生源も複数存在しています。実際の住環境においても実験用ブースと同様の効果が発揮されているのでしょうか?
 筆者は自宅で空気清浄機を使用し、浮遊しているカビの数を測定して検証してみました。

方法

 検証は8月に筆者の寝室で行いました。8畳(体積は約31m3)のフローリングで一部に絨毯が敷かれています。部屋の広さに合わせ、適用床面積が8畳のHEPAフィルター式空気清浄機を選択しました。インターネット通販サイトによると適用床面積20~30畳の機種が売れ筋の上位を占めているようなので、今回の機種は比較的コンパクトな機種と言って良いでしょう。
 測定対象はカビとしました。空気清浄機を稼働した状態と、稼働していない状態の浮遊カビ数の経時変化を比較することにしました。室内の浮遊カビは落下と自然換気により減少していきます。まずは浮遊カビの自然減衰の速度を調べるためにブランク測定を実施しました。 DG18培地をエアーサンプラーにセットし、部屋の中央1点と隅2点の3箇所で浮遊カビをサンプリング(流速100L/min)することで室内の浮遊カビ数を測定しました。部屋の窓・ドアを閉めた段階で開始とし、0分、15分、30分が経過するごとにサンプリングしました。
 続いて、部屋の窓・ドアを閉め、空気清浄機を稼働した状態でテスト測定を実施しました。以降の測定手順はブランク測定と同様です。
 各培地は25℃で7日間培養し、培地上に発育したカビのコロニー数を空気1m3あたりのカビ数(cfu/m3)に換算し、浮遊カビ数の経時変化を求めました。

図1 空気洗浄機と浮遊カビ測定の配置図

測定結果

 空気1㎥当たりのカビ数(cfu/m3)の推移をグラフに示します。ブランクでは初期値740cfu/m3だった浮遊カビ数が30分後には270cfu/m3に若干減少しました。一方、空気清浄機稼働時では初期値1,100cfu/m3だったカビ数が30分後には60cfu/m3まで減少しました。グラフ(左)を見ると、ブランク(自然減衰)よりもテスト(清浄機稼働)の方が直線の傾斜が大きくなっています。これは、テスト測定の減少速度が速いことを表しており、空気清浄機を稼働することで、室内の浮遊カビ数を低下させたことを示しています。

図2 室内空気1㎥あたりのカビ数
図3 初期のカビ数を100%として残存率を計算した

その効果は?

 室内空気の浄化スピードを表す指標の一つに相当換気回数(回/h)が用いられています。これは1時間で部屋の空気を何回入れ替えるかを示す指標で、例えば、1回/hならば1時間で部屋の空気を丸ごと1回入れ替えたことを示しています。相当換気回数が大きいほど部屋の空気が早く浄化されると言えます。相当換気回数はブランクおよびテストの浮遊カビ数から計算することができます註1。今回、開始15分後の測定値から計算した相当換気回数は4.5回/h となりました。これは1時間で部屋の空気を丸々4.5回入れ替えたことを示しています。建築基準法が定める住宅の必要換気回数は0.5回/h以上とされており、空気清浄機の相当換気回数はその9倍くらいの数値となりました。
註1:JACA編、室内空気清浄便覧(2000)

 それでは、この相当換気回数4.5回/hがどの程度のものなのか、もう少し違う角度から検証してみます。住宅の浮遊カビ数は外気の影響を受けやすいため、屋外からのカビ胞子流入が著しい場合、汚染評価が難しくなることがあります。そこで、浮遊カビ汚染の程度を知る指標としてI/O比(屋内カビ数÷屋外カビ数)が用いられます。I/O比が1.0を超えた場合、室内に真菌の汚染源が存在していると考えます。日本建築学会では住宅の管理基準として、「浮遊カビ数が1,000cfu/m3以下であること」に加え、「1000cfu/m3以上の場合はI/O比が2.0以下であること」と定めています註2。筆者の寝室は基準値ギリギリの状況のようで、テスト測定時の初期値は1,100cfu/m3、I/O比は2.5で基準値をオーバーしていました。清浄機を稼働させると、15分後には240cfu/m3、I/O比は0.25まで低下し、あっという間に基準値未満の状態まで落ち着きました。この結果から適切な床面積の空気清浄機を使用することで、実用的な清浄効果が期待できそうです。
註2: A I J 編、日本建築学会環境基準
AIJES-A0002-2013 微生物による室内空気汚染に関する設計・維持管理規準・同解説(2013)

常時運転がオススメ

 ただし、空気清浄機はカビの汚染源そのものを消滅させる効果はないので、除菌効力が得られるのは清浄機を稼働させている時間に限定されます。言い換えれば、常時運転を続けることで基準値以下の環境を保つことが出来るのではないでしょうか。
 快適な室内環境の構築に是非、空気清浄機をお役立てください。

公立美術館における昆虫類の捕獲調査

(2019.7.9 IPM研究室)

環境科学研究室では、「ダニ」「カビ」「微小昆虫類」「抗菌性評価」など
室内環境の有害生物の研究・調査に対応いたします。

【室内環境生物分野の試験および研究】
  • 室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究
  • 喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルゲンとなる生物の研究
  • 大学や国公立の研究機関との共同研究
  • 空気清浄機の除菌性能評価、抗菌素材の性能評価などの商品実用試験
  • 異物混入検査

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