エフシージー総合研究所・フジテレビ商品研究所

2015年研究発表

【平成27年室内環境学会学術大会】

住宅の寝室から採取したハウスダストに含まれるダニ,昆虫,真菌の調査(2報)

日時・場所:2015年12月4日 沖縄コンベンションセンター
○橋本 一浩(会員)1),川上 裕司(会員)1),小田 尚幸(会員)1), 神山 典子(非会員)2),山崎 史(非会員)2),赤野 景子(非会員)2),西澤 孝士(非会員)2), Toby BASEY-FISHER(非会員)2),麻野 信弘(非会員)2),福冨 友馬(非会員3)
1)(株)エフシージー総合研究所 IPM研究室
2) ダイソン
3) 国立病院機構相模原病院臨床研究センター

Abstract: As for the typical allergen in indoor environment, mites, pollen, booklices, pet dander and fungi are known. This time, we examined the distribution of organisms causing allergens in 38 houses in Tokyo, Kanagawa, Saitama, Chiba and Ibaraki. As a result, housedust mites (Dermatophagoides farina and D. pteronyssinus) and booklices were found from housedust of nearly all residences. Moreover, Aspergillus section Rectricti, Cladosporium and yeasts isolated from housedust in each residences.

キーワード:寝室,ハウスダスト,室内塵性ダニ,昆虫,真菌

1.緒言

 生物由来のアレルゲンとしては,ダニ,真菌,昆虫,愛玩動物の落屑,花粉が知られているが,特にコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae )とヤケヒョウヒダニ(D. pteronisinus )が最も重要なアレルゲンである。演者らは近年,室内害虫として知られているチャタテムシ(Liposcelis bostrichophila )が,喘息患者の新たな吸入性アレルゲンであることを明らかにしている。演者らはヒトが長時間過ごす寝室のアレルゲンが特に重要であると考え,2014年の春〜秋にかけて,東京近県の住宅38軒を対象に寝室及び寝具におけるアレルゲン生物の分布調査を実施した。昨年の大会では,春夏の集計結果を第1報として報告した。今回は春〜秋の3シーズンを通した集計結果を続報として報告する。

2.方法

 調査は2014年の春(3〜5月),夏(7〜8月),秋(10〜11月)に1回ずつ実施した。
 一般住宅38軒(東京29軒,神奈川4軒,埼玉3軒,千葉1軒,茨城1軒)のモニターにサイクロン式掃除機2機種(Dyson-DC61とDC63)を配布し,ハウスダストの収集にご協力頂いた。ハンディタイプのDC61は寝具,キャニスタータイプのDC63は床のダストの吸引に用いた。寝具および床の90×180cmの範囲を1分間かけて吸引した。集めたダストは重量を計量し,以下の3つに取り分けてそれぞれ分析を行った。(1)ダニ・昆虫分析用((2)と(3)を除いた全量),(2)ダニ抗原分析用(約50mg),(3)真菌分析用(約10mg)。
【ダニ・昆虫の分析法】
 ダーリング液遠心浮遊法により,ダストからダニや昆虫を分離し,実体顕微鏡および生物顕微鏡で同定を行った。
【ダニ抗原の分析法】
 ELISA測定を実施し,ダスト1mgあたりのダニアレルゲン量(Der f 1及びDer p 1)を算出した。
【真菌の分離・培養法】
 ダストをPBSに懸濁し,DG18寒天平板培地に塗抹した。25℃で7日間培養し,形態観察により,種または属の同定を行った。

3.結果および考察

 D. f. (コナヒョウヒダニ)は分離頻度が高く,全ての住宅の床および寝具から100%分離された。分離数の合計は床で30,927頭,寝具で8,783頭であった。一方,D. p. (ヤケヒョウヒダニ)は床では38軒中10軒(26.3%)から分離され,寝具では38軒中13軒(34.2%)から分離された。分離数の合計は,床で505頭,寝具で428頭であった。室内塵性ダニのうち,D. f. の分離数・分離頻度が圧倒的に多かった(図1)。過去の報告では,D. f. D. p. の割合は比較的拮抗していたが,近年の住宅では,D. f. の割合が非常に多くなっていることが示された。また,ダニ抗原量も同様で,Der f 1量(D. f. 由来)の方がDer p 1量(D. p. 由来)よりも多かった。寝具塵中のDer 1が2μg/g dustを超えると感作のリスクが増大するとされるが,今回,寝具で2μg/g dustを超過したのは,春では38軒中18軒(47.4%),夏では38軒中27軒(71.1%),秋では38軒中28軒(73.7%)であった。

 昆虫類は,演者らの過去の調査と同様, チャタテムシの分離頻度が高かった。床では38軒中全て(100%)から計1628頭が分離され,寝具では38軒中34軒(89.5%)から計213頭が分離された。
 真菌の種類,分離数,分離割合は住宅によって様々であったが,AspergillusCladosporiumAlternariaWallemia,酵母などの分離頻度が高かった。AlternariaAureobasidium,酵母など好湿性真菌は床よりも寝具での分離頻度が高い傾向にあった。Alternariaは喘息における重症化の因子として知られており,興味深い結果である。
 D. f. とチャタテムシの分離数は,春よりも夏,または春よりも秋に多くなる傾向を示したが,夏と秋の間には有意差は見られなかった。このことから,春から夏にかけて増殖したD. f. とチャタテムシは,秋に入ってもダストとともに貯留し続けていると考えられた。
 床におけるD. f. の数は,絨毯・畳よりもフローリングの部屋で少なかった(図2)。また,床におけるD. f. とチャタテムシの数は,床の掃除頻度が多い住宅ほど早期に減少する傾向にあった(図3)。この結果から,週2回以上の清掃を実施することでダニやチャタテムシを抑制できると考える。

 ハウスダストに含まれるダニの調査は1960年代以降,盛んに行われてきたが,21世紀に入ってからは報告の頻度が少ない。今回の調査結果は貴重な資料の一つになると考えている。

環境科学研究室では、「ダニ」「カビ」「微小昆虫類」「抗菌性評価」など
室内環境の有害生物の研究・調査に対応いたします。

【室内環境生物分野の試験および研究】
  • 室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究
  • 喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルゲンとなる生物の研究
  • 大学や国公立の研究機関との共同研究
  • 空気清浄機の除菌性能評価、抗菌素材の性能評価などの商品実用試験
  • 異物混入検査

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