エフシージー総合研究所・フジテレビ商品研究所

2015年研究発表

シンポジウム「アスペルギルスのオクラトキシン産生菌」

Section Circumdati のオクラトキシン産生性について

エフシージー総合研究所 IPM研究室 橋本一浩

 Aspergillus section Circumdati (A. ochraceus group) に含まれる種は数々の代謝物を産生することが知られている。ochratoxins, penicillic acids, xanthomegnins およびmelleinsが代表的であるが,特にオクラトキシン A(OTA)はヒトへの健康危害が想定されるため,マイコトキシンとして重要性が高い。

Section Circumdatiは1965年にRaper & Fennellに提唱されて以降,数々の種が報告されているが,OTAを産生する種は伝統的にAspergillus ochraceusと同定されてきた。しかし,近年,遺伝子解析と形態学的検討および代謝産物の分析によってsection Circumdatiの新種が提唱され,主なOTA産生菌はA. ochraceus,A. westerdijkiae,A. steyniiの3種とされた。この時,OTA産生株のオリジナルであったA. ochraceus NRRL3174は A. westerdijkiae と再同定された。今後,これまでA. ochraceusとされていた菌株の多くが訂正される可能性が高い。

 今回,当研究室で保存している65株について,ミトコンドリア・チトクロームb(Cytb)遺伝子およびβ-tubulin遺伝子の塩基配列を決定した。65株はいずれも日本国内の住宅とその周辺環境(空気中,昆虫,土壌,生活雑貨)にて分離された菌株である。さらに,65株を大麦で培養・抽出し,OTAの産生量をLC/MS/MSにて定量した。

 結果,今回の菌株は,A. westerdijikiaeが含まれるクラスター, A. ochraceusが含まれるクラスター,A. sclerotiorumが含まれるクラスターの大きく3つに分かれた。特に,A. westerdijikiaeクラスターに分類される菌株が多く,47株(72.3%)がこのクラスターに集中した。A. ochraceus クラスターには13株が分類され, A. scleotiorumクラスターには5株が分類された。A. westerdijikiae A. ochraceusクラスターは比較的近縁で,A. scleotiorumクラスターのみ遺伝距離が離れていた。Cytbとβ-tubulinの分類結果に大きな違いは見られなかった。また,OTA産生の主要菌の一つとされるA. steyniiは1株も確認できなかった。

 OTA産生株はA. westerdijikiaeに集中しており, A. westerdijikiaeのOTA産生量は大麦5gあたり平均1721μg(S.E.=316)であった。一方,A. ochraceus及びA. sclerotiorumクラスターに分類された菌株は,いずれもOTA産生量が定量下限値を下回った。

 以上の結果から,日本国内に分布するOTA産生能を持つsection Circumdatiの多くがA. westerdijkiaeであると予想される。

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