今までの研究レポート

音波式歯ブラシの
使用感と歯垢(プラーク)除去効果
音波式(音波振動 *1)電動歯ブラシ(以下、音波式歯ブラシと記載)について、その使用感評価と歯垢(プラーク)の落ち具合について調査しましたのでご紹介します。
*1)音波振動:音波領域内での振動
音波式歯ブラシ
デンタルケアで欠かせないのが歯磨きの道具である歯ブラシです。一昔前は1万円以上で販売されていた電動歯ブラシですが、最近では、低価格帯(2〜5千円)の音波式歯ブラシが家電量販店だけでなく、スーパーやドラッグストアにも登場して、手軽に買い求めることが出来るようになりました。従来の大きくて重いイメージを払拭するように、コンパクトでスリムになっているのはもちろん、電池式のもの、フタ付で携帯に便利なもの、微振動設計のもの、静音化設計のものなどいろいろなタイプが出揃いました。
これらの「音波式歯ブラシ」を手磨き用歯ブラシと比べて、どんな利点があるのか、歯垢は取れるのか、有効に活用するにはどのようなタイプを選ぶと良いのかなどを調査しました。
目 的
音波式歯ブラシを購入して、歯ブラシの形状や大きさ、重量、回転数、価格の調査を行い、使用感評価(握りやすさ、操作性、振動、音)と歯垢除去効果試験をする。
試験品
手磨き用歯ブラシ | 新品デンターシステマ(ライオン) |
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手磨き用歯ブラシ | 磨耗歯ブラシ |
電動歯ブラシ | ①デンターシステマ 音波アシストブラシ(ライオン) ②音波振動ハブラシ ドルツスリム(パナソニック) ③音波振動ハブラシ ポケットドルツ(パナソニック) ④オムロン音波式電動歯ブラシ メディクリーン(オムロン) ⑤ソニッケアー(フィリップス) |
試験項目
(1)音波式歯ブラシの調査
充電式or電池式、回転数、大きさ、重量、歯ブラシの形状、価格の調査をする
(2)使用感評価(7段階)
美容研究員6名で使用感評価をする
(3)人工プラーク(歯垢)除去効果試験
模型歯型に人工プラークを塗布し、各歯ブラシで3分間磨いた後の除去率を算出する
試験結果
(1)音波式歯ブラシの調査結果
音波式歯ブラシを調査した結果を(表1)にまとめました
電 源 | 音波式歯ブラシは、回転数が1万回弱またはそれ以上あり、電源は充電式と乾電池式があります。乾電池式は単4電池1個で約180分使え、1日1回2分間ずつ使用して3ヶ月使えます。携帯用には便利な仕様の商品と言えます。一方充電器式は、充電するのに12〜16時間を要し、1回の充電で、⑤ソニッケアーは50分使用可能(2分×25回)です。 |
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振 動 | ①音波アシストは回転数が1万回に満たず、手磨き用歯ブラシと同じように手を動かしながら磨きます。他の音波式歯ブラシは、ブラシを順番に移動して歯列全体に当てるだけで、全ての歯を効率よく磨くことが出来きます。②ドルツスリム、④オムロンメディクリーンは2万回転を超えるので振動や音が大きくなります。⑤ソニッケアーは3万回転以上です。 |
価 格 (オープン価格) |
⑤ソニッケアーは本体が1万円弱、替ブラシも1本当たり約1300円であり、この中では1番高額です。他の音波式歯ブラシは、本体が2000〜5000円であり、替ブラシは手磨き用歯ブラシと変わらない300円前後です(ブラシの交換の目安:手磨き用歯ブラシは1ヶ月、電動歯ブラシは3ヶ月)。 |
大きさ | いずれの音波式歯ブラシも本体がスリムになり、重量も軽量化しています。手磨き用歯ブラシが12gであるのに対して、1番大きい⑤ソニッケアーは140gでこの中では1番重量もあります。他の音波式歯ブラシは30〜60gです。 |
(2)使用感評価の結果
各歯ブラシを、美容研究員6名で7段階評価をしました(図1)
一部の音波式歯ブラシ(※図1)では、握りやすさや操作性、振動、音などの評価が低くなりましたが、音波式歯ブラシは、手磨き用歯ブラシに比べて「歯のツルツル感」、「歯垢の取れるスピード」「歯茎のマッサージ感」、「歯茎の引き締め効果」、「歯垢の除去効果」、「総合評価」で高く評価されました(図1)
※ 評価が低かった音波式歯ブラシ(図1)「振動の強さ」 | ④オムロンメディクリーン |
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「ヘッドの大きさ」「柄の太さ」「握りやすさ」 | ⑤ソニッケアー |
「柄の長さ」 | ③ポケットドルツ |
「歯ブラシの動かしやすさ」 | ④オムロンメディクリーン |
「音」 | ②ドルツスリム ④オムロンメディクリーン |
「使用中の痛み」「歯茎への傷や衝撃」 | ④オムロンメディクリーン |
(図1)の評価項目を下記のように8項目(A〜H)にまとめ、各歯ブラシについて5段階評価にして(表2)にまとめました
(表2・下記)のレーダーグラフの青色はデンターシステマ(手磨き)、ピンクは 音波式歯ブラシの平均、緑色はそれぞれの音波式歯ブラシの評価です
評価項目(図1) | 評価項目(表2) |
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ヘッドの大きさ | A.本体・ヘッドの大きさ |
柄の太さ | |
柄の長さ | |
握りやすさ | B.握りやすさ |
歯全部への届きやすさ | C.歯全部への届きやすさ |
動かしやすさ | D.動かしやすさ |
振動の強さ | E.振動・音 |
音 | |
歯茎のマッサージ感 | F.歯茎のマッサージ感・引き締め効果 |
歯茎の引き締め効果 | |
使用中の痛み | G.使用中の痛み |
使用中の歯茎への傷や衝撃 | |
歯のツルツル感 | H.歯垢除去効果・スピード感 |
歯垢の取れやすさ(スピード) | |
歯垢除去効果 歯の表側 | |
歯垢除去効果 歯の裏側 | |
歯垢除去効果 噛み合わせ | |
歯垢除去効果 歯と歯茎の間 |
(3)人工プラーク(歯垢)除去効果試験結果
【試験結果】
1)人口プラークを均一に混ぜる
2)模型歯型(28本)の全歯全面に均一に筆で事項プラークを塗布
3)塗布後、5分乾燥
4)写真撮影(ブラッシング前)
5)3分間ブラッシング
6)流水で10秒すすぐ
7)写真撮影(ブラッシング後)
【除去の算出方法】
(表3) プラークの除去率(%)
回転数(rpm) | パネル1 | パネル2 | 平均値(n=2) | |
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手磨き 磨耗ブラシ | 76.9 | 84.2 | 80.6 | |
手磨き デンターシステマ | 91.6 | 93.7 | 92.7 | |
①音波アシスト | 9,000 | 94.3 | 94.9 | 94.6 |
②ドルツスリム | 26,000 | 96.0 | 98.7 | 97.4 |
③ポケットドルツ | 16,000 | 95.2 | 98.9 | 97.1 |
④オムロンメディクリーン | 25,500 | 96.4 | 98.0 | 97.2 |
⑤ソニッケアー | 31,000 | 99.1 | 98.0 | 98.6 |
- 手磨き用歯ブラシ(デンターシステマ)は、90%強の除去率で歯垢除去効果は十分ありました。しかし、使用を続けて毛先が広がった磨耗ブラシになると80%前後に落ち除去能力は低下しました。
効率よく磨くためには、毛先が広がる前に定期的にブラシを交換することが重要です
交換の目安は、ブラシを平らな面に置き、上から見て毛先で台が見えなくなった時ですので、参考にして下さい - 音波式歯ブラシは、94%以上の除去率で、手磨き用歯ブラシより除去能力がいずれも高いことが分かりました。
歯垢を磨き残しなく効率よく取るためには、音波式歯ブラシを使用することも1つの方法ですので、自分に合ったものを選んでぜひ使ってみてください - 回転数と除去率の関係を見ると、回転数(除去率)31,000rpm(98.6%)>16,000(97.1)>9,000(94.6)というように、回転数(振動数)の高い音波式歯ブラシほど、除去率が高い傾向でした
まとめ
音波式電動歯ブラシは、
- ヘッド(ブラシ)が交換でき、低価格で気軽に使用できる
- 音波領域内の振動であるが、低振動、静音設計である
- 本体がスリム化して軽量である
- 手磨き用歯ブラシに比べて「歯のツルツル感」「歯垢の取れるスピード感」
「歯茎のマッサージ感」「歯茎の引き締め効果」「歯垢の除去効果」の項目で評価が高い - 手磨き用歯ブラシに比べて、高い歯垢除去効果がある
- 回転数(振動数)が高いほど、除去率が高い
- 磨耗したブラシは歯垢除去効果が低下する
(ブラシの交換の目安は3ヶ月毎、手磨き用は1ヶ月毎を奨励している)
強い振動や音が苦手な人には、回転数が低い
①音波アシスト
③ポケットドルツ
振動や音は気にならず歯垢をしっかりとスピーディーに取りたい人には、
②ドルツスリム
④オムロンメディクリーン
⑤ソニッケアー
オフィスでの使用や旅行などの携帯用には、
③ポケットドルツ
がお勧めです
(2011.04.28 美容・健康・料理研究室)