(73)情熱と連携が広報機能を高める

東洋ゴム工業 ・広報企画部長 北川治彦氏

日本工業新聞社の経済情報紙「フジサンケイ ビジネスアイ」にて、広報部門のエキスパートに取材をしてご紹介しております。

フジサンケイ ビジネスアイ
コーナー 「広報エキスパート」
取材先 東洋ゴム工業 ・広報企画部長 北川治彦氏
新聞発行日 2018年7月5日(木)掲載

広報のプロに広報戦略を聞く。広報エキスパート

【プロフィル】
北川治彦(きたがわ・はるひこ)
 1991年京都外語大外国語卒、流通系企業に入社し、広報室に配属。2001年電子部品メーカーに移り、広報室で企業広報、製品広報などを担当。11東洋ゴム工業、同年8月から現職。


─2015年に免震ゴムデータ偽装事件が起きました
 基準を満たさないまま出荷していた免震ゴム製品の交換修正を、経営の最優先課題に掲げて対処を続けています。ようやく半ばを超えましたが、最後の一基まで完遂させることを会社として宣言し、対策本部の社員が、さまざまな方のご指導やご協力をいただきながら奔走しています。社会からの信頼を損ない、70有余年の会社の歴史の中でも最大の危機に直面しました。しかし、誤解を恐れず言えば、私たちは自分に足りていなかったものを見つめ直し、改めていくチャンスをもらったと受け止めています。


─会社は着実に変化してきているでしょうか
 変わったかどうかは社会から評価していただくことですが、経営刷新した体制で社長に就任した清水隆史は、「変わらなければ我々に明日はない」というほどの固い意志を、メッセージとして社内に発信し続けています。ガバナンスやコンプライアンス、品質保証などの社内基盤の改革と再強化◇会社の根幹ともいえる理念の見直しと制定◇事業本部制から機能別組織による調和を目指した抜本的な組織改正-など、過去2年間は社内変革を一つ一つ積み重ねてきました。


─来年、「TOYO TIRE」に社名変更します
 昨年、本社を大阪から、技術開発拠点に隣接した兵庫県伊丹市の新社屋に移転しました。本社と技術開発拠点の機能を融合・集約したのは、当社の持ち味である機動力や創造性を更に高める意図があります。社長の清水は「整えてきた新しいしくみや器にふさわしい本当の中身を、われわれ自身が創っていこう」と社内を鼓舞しています。社名変更するのも、グローバルに業容が拡大し、将来を見据えたターニングポイントにきていることを背景に、モビリティという事業に携わる誇りと責任を携え、「TOYO TIRE」という名前を本物にしていく覚悟を示すものです。


─大きな変革の中で広報態勢も充実が必要では
 総勢9人で対外広報、IR、社内広報の機能を担っています。態勢よりもマインド。広報担当者が生産や販売、そしてコーポレートなど他の部門の人たちに信念をもって働きかけ、一緒にいい会社にしていくマインドで仕事をしていけば、社内の連携が生まれ、広報機能そのものが充実していくのではないかと考えています。強みであるSUV用大型タイヤ事業のポテンシャルや、ユニークで高い技術力の対外的な打ち出しなどは「それらに携わる社員の情熱や誇り」と、「広報担当者の伝えたい思い」の掛け算で発信力が高められていると感じています。社内報も、経営幹部の伝えたいメッセージ、従業員の知りたい思い、部門を超えた情報などが有機的に交わる「交差点」になることを目指しています。


─広報を担当して28年になります
 過去に、会社の経営破たんに当事者として立ち会わなければならなかった経験、創業者の経営哲学を実践する会社で仕事との向き合い方を学んだ経験は、現在の私の会社観、仕事観を形成しています。広報はモノを作るわけでも販売するわけでもないので、残念ながら直接的には会社利益に貢献できません。ですが、情報の媒介者として、付加価値を創造することはできます。むしろ、それが広報の真骨頂であり、答えは自分の情熱と打ち手が創るわけですから、おもしろくも辛くもあり、可能性は無限。やりがいのある仕事に恵まれ幸せです。



(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子 2018.7.27更新)