研究員オダの環境レポート
Vol.39 抗生物質とワクチン
<2015.02.09 更新>

 Vol.37 『風邪と抗生物質』では抗生物質をはじめとした様々な薬剤を紹介いたしました。今回はワクチンについて紹介します。

■ ワクチンと抗生物質の違い
 ワクチンは無毒化(あるいは弱めた)した病原体を体内に注入することで、ヒト側に抗体を作らせて感染症にかかりにくくする薬剤です。注射が基本ですが,飲むものもあります。現在は乳児に限られますが、以前まで小学校で行われていたBCGも結核(結核菌)に対するワクチンです。
 ワクチンには「不活化ワクチン」と「生ワクチン」の2種類があります。「不活化ワクチン」は化学処理によって死んだウイルスや細菌などを使用する場合と、微生物の抗原部分(免疫が反応する部位)のみを接種する場合があります。どちらも不活化されているため、免疫を獲得している期間が短いために複数回接種する必要になりますが、副反応(副作用)が少ないのが特徴です。不活化ワクチンには日本脳炎(ウイルス)・インフルエンザ(ウイルス)、コレラ(細菌)などがあります。
 生ワクチンは毒性を弱めた生きた細菌やウイルスを使用します。不活化ワクチンよりも免疫獲得期間が長いのですが、副反応がおこることもあります。BCGの他に、麻疹、水疱瘡(みずぼうそう)(どちらもウイルス)などのワクチンが含まれます。

■ インフルエンザのワクチン
 「接種しないほうがいい」という意見がインターネット上でよく見られます。また、研究者が接種しない理由を書いた本や,逆に接種を進める論調もあります。実際のところはどうなのでしょうか。
 高齢者や慢性疾患をもつ人がインフルエンザにかかった際,併発した合併症が重症化して死亡に繋がるケースも多いようです。インフルエンザワクチンは重症化の防止に効果があります。特に,高齢者や慢性疾患をもつ人への効果は世界的にも認められており、世界保険機構(WHO)も接種を推奨しています。1970年までは、不活化させたインフルエンザウイルスそのものがワクチン(不活化全粒子ワクチン)として利用されており、まれに副反応で脳に重大な後遺症や死亡してしまうケースが生じたことから、接種に反対の意見が生まれたようです。
 この話を聞いてインフルエンザワクチンの副作用について不安に感じる方も多いかと思います。現在、不活化全粒子ワクチンは使用されておらず、抗体がウイルスを識別する部分な集めたワクチン(スプリットワクチン)が利用されています。平成23年の秋から昨年の夏までの3年間に季節性インフルエンザワクチンの副作用で亡くなった方は9件報告されておりますが、いずれも重い持病を持っている高齢の方でした。また、昨年の重症化した副作用報告数は出回ったワクチン総数のうち0.0008%程度でした。このようにスプリットワクチンで副作用が起こる可能性は非常に低くなっています。

 インフルエンザワクチンを製造するために鶏卵が利用されています。鶏卵でのワクチン製造は半年程度必要なので、流行しているウイルスの型を確かめてから製造することができません。そこで昆虫の細胞を人工的に培養し、そこでインフルエンザワクチンを作る技術が開発されています。人工培養細胞でのウイルス製造は約2ヶ月と短期間で大量のワクチンを製造することが可能です。近い将来,流行しているウイルスにあったワクチンを極めて短時間で作ることができるようになるかもしれません。

 
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このコラムについて エフシージー総合研究所・IPM研究室の活動内容や、研究中の内容をスタッフ目線でレポートした記事です。一般のかた向けに分かりやすく解説しています。
IPM研究室とは エフシージー総合研究所・暮らしの科学部所属。室内環境の有害物質を調査・研究しています。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主仕事としています。
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