研究員オダの環境レポート
Vol.36 冬の食中毒に注意
<2015.01.19 更新>

 先日、北海道小樽の病院でノロウイルスが原因の集団食中毒が起こりました。そこで今回は食中毒について、厚生労働省が公開している食中毒統計資料を参考に紹介します。

■ 細菌より危ないウイルス性食中毒
 平成25年の統計では、食中毒の発生件数全体が931件ありました。食中毒の原因として様々ありますが、細菌性食中毒が361件、ウイルス性食中毒が351件と、この2つで全体の3/4を占めています。発生件数ではウイルスと細菌は同程度ですが、患者数ではこれが一変します。月ごとの推移を図1に示します。

図1:平成25年の食中毒患者数の年間推移

 12〜3月の冬季〜早春にかけて、細菌性の患者数よりもウイルス性の患者数が極端に多いことがお分かりいただけるかと思います。総数として細菌性が6055人なのに対して、ウイルス性が13645人とウイルス性食中毒の患者は細菌の倍以上います。ウイルス性食中毒は冬季に発生し、大流行します。これは、ウイルス性の食中毒は乾燥に強く感染力も高く、集団感染になりやすいためです。
 ウイルス性食中毒の患者数を原因別に分けた場合、93%(12672人)がノロウイルスによる食中毒です。ノロウイルスは野大半が経口感染で、以下の4つの感染経路があります。

 (1) 患者の糞便や吐ぶつが乾燥飛散して二次感染
 (2) ヒトからヒトへの直接感染
 (3) 調理者をはじめやその者を介して汚染した食品を食べた場合
 (4) 汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合

 ノロウイルスは感染力が高く、ごく少数のウイルス粒子が体内に入るだけで感染するため、大規模感染に繋がってしまいます。また、ノロウイルスが消毒用エタノールや逆性石鹸では不活化できない点も、感染が拡大する原因の一つです。

■ ノロウイルスの対策
 ウイルス性食中毒は細菌性の食中毒とは異なる対処が必要です。

 ①  消毒用エタノールや逆性石鹸では不活化しません。ですが、手の脂肪などの汚れを落とすことで、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。手洗いは帰宅時、調理前、食事前、トイレ後などに必ず行いましょう。手洗いの方法については「Vol.27 バイキンの広がりと手洗い」や「Vol.31 インフルエンザウイルス」で紹介しましたのでそちらもご覧ください。

 ②  不活化には加熱も有効です。食品の感染源として魚介類が多いので、これらを食べる際にはよく加熱(中心部を80℃以上で2分間以上)をしましょう。

 ③  家族がノロウイルスに感染した場合、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつからの二次感染予防がとても重要になります。まずは慌てず落ち着いてください。間違っても、素手でふん便、吐ぶつに触れないでください。

 ④  ノロウイルスには、次亜塩素酸ナトリウム(キッチン漂白剤)が唯一効果のある薬品です。可能ならば、飛沫が出ないようにふん便や吐ぶつに直接かけるのが一番有効です。しかし、次亜塩素酸ナトリウムを直接使うことは、家財の腐食や人体への危険性が伴います。そこで、目的に応じて薄めて使用すると良いでしょう。
 ふん便、吐ぶつは、ペットボトルキャップ2杯のキッチン漂白剤を500mLで希釈した次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約1000ppm)をかけた後、ビニール袋でしっかりと密閉して廃棄しましょう。
 トイレや床などの消毒にはペットボトルキャップ半分のキッチン漂白剤を500mLで希釈した次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)をスプレー等でまいて、しっかりと消毒しましょう。

 ウイルスは乾燥してしまうと空中に飛散しますので、乾燥前の対処が重要な点です。また、次亜塩素酸ナトリウムはノロウイルスに対して有効な手段ですが、人体にも有害です。ウイルス飛沫による二次感染を防ぐためにも換気を十分に行いましょう。

 
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このコラムについて エフシージー総合研究所・IPM研究室の活動内容や、研究中の内容をスタッフ目線でレポートした記事です。一般のかた向けに分かりやすく解説しています。
IPM研究室とは エフシージー総合研究所・暮らしの科学部所属。室内環境の有害物質を調査・研究しています。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主仕事としています。
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