研究員オダの環境レポート
Vol.29 マダニが媒介する細菌性感染症
<2014.11.17 更新>

 以前、「Vol.5 マダニが媒介するウイルスの危険性」でSFTSウイルスについて紹介いたしました。マダニが媒介虫となる感染症は他にもあります。今回は「日本紅斑熱」を紹介します。

■日本紅斑熱とは?
 1984年に初めて患者が報告された、リケッチア症と呼ばれる感染症です。マダニ類が媒介し、マダニの吸血の際に「日本紅斑熱リケッチア(Rickettsia japonica) 」が体内に入ることで感染します。リケッチアはホストとなる寄生宿主の生きた細胞の仲でのみ増殖可能な細菌です。主要な症状は発熱および紅色の発疹、マダニによる吸血痕の3つです。同じリケッチアの感染症として、古くから東北地方で見られ、現在では全国的に見られる「ツツガムシ病」があります。ツツガムシ病は、ダニの一種であるツツガムシの吸血によって、ツツガムシリケッチア(Orientia tsutsugamushi)が感染し発症します。ツツガムシ病も発熱・発疹・吸血痕の症状が現れるため、両者の識別は難しく実験室での血清学的検査が必要です。原因細菌を媒介するダニの活動時期の違いから日本紅斑病は夏季を中心に、ツツガムシ病は10月から12月の冬季に多く患者が報告されています。ツツガムシ病や日本紅斑熱患者の多くは九州・本州南部に集中していますが、全国的に患者が報告されています。

■急増する患者数
 日本紅斑病は2000年代に入り、患者数が急増しています。日本紅斑病が法定感染症に指定されたため、感染者の報告が義務化され医師の認知度が上がり、確実な診断が出来るようになったことが要因の一つです。
 法定感染症として登録された1999年以降2005年までの患者数は40〜60人ほどでしたが、2007年には100人を超え、今年の10月までに200人を超えました。ツツガムシ病ではこれほどまでの急増加はありませんでした。ツツガムシ病は「親ダニから子ダニ」の伝播だけで、「感染動物からダニ」での動物を経由した伝播はありません。しかし、日本紅斑熱では親子の伝播と動物を経由した伝播の両方で保菌ダニが生まれます。増加の原因には、このような原因微生物の伝播様式の違いも関係しているようです。

■対策
 SFTSウイルスと同様に、ワクチンによる予防が出来ないため、ダニに刺されないことが重要です。登山やハイキングの際には、なるべく素肌を露出しない服装を着用し、昆虫忌避性の高い医薬品の虫除け剤(ムシペール)も併用しましょう。
 お年寄りのように抵抗力が無い場合や、治療を受けていない場合などに重症化して死に繋がる報告もあります。リケッチアが原因となる感染症は抗生物質による治療が可能で、早期の治療が重要となります。野山に入った後で発熱があった場合は、甘く考えずすぐに病院に行き、医師に山や林に言ったことを伝え治療を受けましょう。


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