研究員オダの環境レポート
Vol.23 第11回昆虫病理研究会シンポジウム
<2014.09.29 更新>

 9月18日〜20日の3日間、山梨県富士吉田市で行われた「第11回昆虫病理研究会シンポジウム」に参加してきました。本シンポジウムは2年おきに開催され、「昆虫病理学」にかかわる最先端の研究が報告されます。私の発表は、大学院後期課程での研究テーマであった、「昆虫病原性のカビBeauberia bassianaの日本国内株の再分類」です。B. bassinaは冬虫夏草の親戚で、微生物農薬として利用されているカビです。これまでの国内での研究は農薬的な利用に向けたものが多く、遺伝子解析による分類は少数派でした。私が国内のボーベリア菌を遺伝子配列から解析して再分類したところ、国内における新種の存在や、これまで知られていなかったグループに分類出来ることが明らかになりました。
 微生物に限らず生物の分類は、直接的に何かの役に立つことは少ないため、派手さはありません。ですが、縁の下の力持ちのように、私が明らかにした系統関係を下地にして、昆虫病原性カビの発展に繋がってほしいと考えています。

 本シンポジウムでは、デング熱ではなくマラリア媒介の蚊をターゲットとした、B. bassinaの報告もありました。これまで殺蚊性の昆虫病原性微生物はいくつか見つかっており、アフリカでは化学殺虫剤に加えてBT剤(微生物殺虫剤)がすでに利用されています。国内でも、ユスリカを対象としたBT剤が販売されています。これらは蚊に有毒な微生物を用いて殺蚊する方法ですので、農薬として利用できる微生物は限られています。しかし、最終目的は蚊を殺すことではなく、感染症の媒介を防ぐことです。本報告では殺蚊性が低くとも蚊を病気にすることで、飛翔や吸血、産卵などの行動を制限して、病気の媒介を防止することを目的とした研究内容でした。この方法は、蚊を毒素で殺してしまうBTや化学殺虫剤には出来ない、寄生性微生物特有の防除法です。また、これまでの微生物農薬とは、まったく異なる防除法でもあったので非常に面白い内容でした。

 本シンポジウムは、学生が気軽にポスター発表できる会でもあります。今回の学生ポスター発表は38件あり、各々の研究の成果を発表していました。学生のポスター発表の中から優秀ポスター賞を決めているのですが、今回は私も審査員として、ほかの先生方に混じり選出に携わりました。どのポスターも、自分が学部4年生や博士前期課程の際に作ったものとは比べ物にならない出来で感心しました。優秀賞を受賞したポスターはどれも、問題提起・結果がわかりやすく示されているもので、自分の発表にもフィードバックしていきたいと感じました。

 
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このコラムについて エフシージー総合研究所・IPM研究室の活動内容や、研究中の内容をスタッフ目線でレポートした記事です。一般のかた向けに分かりやすく解説しています。
IPM研究室とは エフシージー総合研究所・暮らしの科学部所属。室内環境の有害物質を調査・研究しています。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主仕事としています。
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