研究員オダの環境レポート
Vol.22 デング熱の流行[第2報]
<2014.09.16 更新>

 先週に続き、今週もデング熱に関する話を取り上げます

■デング熱の現状
 デング熱患者が9月15日現在100名を超し、千葉県と神奈川県からそれぞれ患者の報告があり、18都道府県に拡大しています。代々木公園や新宿御苑では蚊の駆除を実施しましたが、その後の調査で、ウイルスを持つ蚊が生存していることが判明しました。新たに患者が見つかった神奈川県横浜市では、その感染者が代々木公園に立ち寄った後に新たに蚊に刺された横浜市金沢区「海の公園」の一部を封鎖しました。その上で、生息しているヒトスジシマカを検査しましたが、デング熱ウイルスは確認できなかったようです。千葉市から出ていない方からも感染が報告されており、未だ分布域の現状がはっきりしませんが、予想以上にホットスポットが多いように思います。
 非常に不安要素の多い状況ですが、名古屋の企業がデング熱ウイルスの増殖を抑えることのできる人型抗体の開発に成功していたことがニュースになりました。熱帯地域の風土病として毎年数百人以上の死者を出しているデング熱を治療する上で、大きな一歩であることは間違いないでしょう。実用化までは数年かかると思われますが、今後の進展が期待されます。

■感染症に対する認識
 8月27日に初めて症状が報告された女性の診察の状況が明らかとなりました。どうやら、病名が特定できないため、患者の母親が症状をインターネットで調べたことからデング熱の疑いが浮上したようです。高熱・発疹はデング熱の特徴的な症状ですが、診察をした医者は気づけなかったようです。このニュースは、デング熱が日本で流行する危険性があることを医者が知らなかったのではないか、と私は考えます。
 前回のコラムでも書きましたが、現在、国内にある医療系、医学系の大学から医動物学や寄生虫学の講座が消えつつあります。「医動物」とインターネットで検索しても。獣医学科のページが多いように感じました。また、医学生もガンなどの研究の主流となる分野を志望する人が多くなっている上、国内の衛生環境が向上し蚊が媒介する感染症の関心が低下していることも事実です。今回のデング熱の一件で、蚊やネズミなどの衛生動物や医動物に対する感心が少しでも高まり、専門研究者が少しでも増えてくれることを期待しています。

 私が大学で専攻していた「昆虫病原微生物」の分野でも、蚊を殺す細菌や真菌が見つかっており、殺蚊性微生物の研究は、微生物農薬の研究とともに非常に関心の高い研究テーマでした。今週末私が参加する「昆虫病理研究会」では、蚊に感染する真菌Beauveria bassianaの発表があるので、次のコラムでその内容をご紹介したいと思います。
 また、昆虫病理研究会への参加のため、次回の更新は28日とさせていただきます。

 
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このコラムについて エフシージー総合研究所・IPM研究室の活動内容や、研究中の内容をスタッフ目線でレポートした記事です。一般のかた向けに分かりやすく解説しています。
IPM研究室とは エフシージー総合研究所・暮らしの科学部所属。室内環境の有害物質を調査・研究しています。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主仕事としています。
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