研究員オダの環境レポート
Vol.21 デング熱感染から見た研究者の情報発信
<2014.09.08 更新>

 8月末から紙面をにぎわしている「デング熱」ですが、日本全国に感染者が拡大し9月5日現在66人の患者が報告ています。代々木公園の蚊からウイルスが検出され、公園も閉鎖されました。

■デング熱とは
 ヒトスジシマカやネッタイシマカによって媒介されるウイルス性の感染症で、熱帯地域の風土病となっています。症状は発熱・頭痛の他に特徴的な皮膚発疹が見られます。デング熱ウイルスには4つの異なる「型」があり、現在代々木公園で確認されているのは1つの型のみと報告されています。
 デング熱の感染経路は「人-蚊-人」のみで、輸血などの特殊な条件を除き、基本的に人から人への感染はしません。予防ワクチンはありませんが、一度感染すると、終生免疫を獲得するため、次回から同一の型は発症しません。そして、健康な成人が1度目の感染で重症になることは稀です。異なる型に感染した場合、重症化することもありますが、その場合の致死率も1%未満〜3%です。

■以前から注目されていたデング熱
 気候変動に伴う気温上昇で、ネッタイシマカの分布域が拡大しているため、昆虫媒介性の疫病の研究者の間では、いつ発生してもおかしくないと10年ほど前から囁かれていました。そのため、国立感染症研究所などでは、ウイルスや主要媒介虫であるネッタイシマカの分布調査を継続して実施していました。
 しかしながら、インターネットの反響を見るとデング熱自体を知らない人も多く、一般の方々に危険性の高い状況はまったく啓発されていないようでした。これまで行われてきたデング熱の実態調査についても、「見つかっていない報告」だったため大きな話題にもなりませんでした。インターネットで検索をすれば、デング熱や他の感染症についての情報が書かれているサイトはありますが、能動的に調べなければ知ることができません。また、「蚊」自体も不快害虫として扱われ、様々な感染症を媒介する衛生害虫だということも一般的でなくなってしまっているように感じます。また、各大学の医学部から医動物や寄生虫の講座が消えつつあることも大きな問題です。
 当エフシージー研究所は、幸いにしてメディアへの露出がほかの研究所よりも容易ですが、ほかの研究機関では情報の発信は自身のホームページや専門雑誌に載せるなど限られているため、広範囲への発信が困難です。今回のデング熱のニュースを見て、研究者の持つ情報を一般の方が情報を拾いやすい形で露出させることが必要だと強く感じました。今後も、デング熱について取り上げていく予定です。

 
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このコラムについて エフシージー総合研究所・IPM研究室の活動内容や、研究中の内容をスタッフ目線でレポートした記事です。一般のかた向けに分かりやすく解説しています。
IPM研究室とは エフシージー総合研究所・暮らしの科学部所属。室内環境の有害物質を調査・研究しています。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主仕事としています。
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