(64)お酢の殺菌効果

 お酢の防腐効果は古くから知られ、寿司、酢漬け、マヨネーズなど保存食品や調理に幅広く利用されてきました。そのためか、「お酢を入れて洗濯すると、洗濯物や洗濯槽を殺菌するので良い」という情報があります。今回はお酢の殺菌効果を検証してみました。

 まず、お酢は洗濯物の細菌をどの程度殺菌できるのでしょうか。5cm角の布片に黄色ブドウ球菌を染み込ませ、水300mLを入れたビーカーに布を入れて洗濯機に見立てました。水だけのビーカーと、お酢(1.5mL)を加えたビーカーを用意して、それぞれ布を1分撹拌後採水し、1mLあたりの黄色ブドウ球菌数を比較しました。添加したお酢の量は、洗濯槽50Lの水に対して250mLのお酢の量に相当します。結果は、お酢を加えても菌数はほとんど変わらないというものでした(グラフA)。つまり洗濯で相当量のお酢を加えても、洗濯物やすすぎ水に含まれる細菌を殺すことは難しいようです。


グラフA:水中の黄色ブドウ球菌数

 では、昔からの「お酢=防腐」のイメージは間違いだったのでしょうか。次は酢飯について検証してみました。普通のご飯と酢飯の細菌数を、調理直後と24時間後で比較してみました。調理直後はご飯と酢飯の細菌数に大きな差はありませんでした。しかし、24時間後では、ご飯は多数の細菌が増殖していたのに対して、酢飯では微増した程度で、普通のご飯に比べ細菌数を10万分の1に抑えていました(グラフB)。


グラフB:ご飯と酢飯の細菌数の変化

 これらの結果から、お酢の効果で優れているのは「殺菌」ではなく、細菌の増殖を抑える「静菌」であることが判ります。ただし、お酢は食品の腐敗防止に効果を発揮しますが、その静菌効果は他の用途に応用しにくく、使用の場面は限られます。お酢には糖分やアミノ酸が含まれており、細菌やカビの栄養源として増殖を手助けしてしまう可能性があります。洗濯にお酢を利用することは適切とは言えません。洗濯物の臭い対策としては、細菌を殺すことに力を入れるよりも、水分を除去して細菌を増やさない工夫をすることが大切です。部屋干しの際には、サーキュレーターや除湿機を利用して早く洗濯物を乾かすことを心がけましょう。

(2014.07.25)

産経新聞掲載記事『比べる×調べる』

 

環境科学研究室