(36)こまめな手洗いで感染症予防

 冬場に流行するインフルエンザや感染症胃腸炎などの予防で最も大切なのは手洗いです。そこで、外出中にどのくらい手が汚れるのか、また手洗いにより付着した細菌をどの程度減らせるかを検証してみました。

  ① 出勤前に十分手を洗い、左の手のひらを普通寒天平板培地に圧着させました。
  ② 途中、電車のつり革、手すり、ドアノブなど不特定多数の人が触れる場所にさわり、出勤後に測定。
  ③ ハンドソープで40秒間手をしっかり洗い、30秒間流水で泡を流し、ペーパータオルで拭いた後に測定。

 これらの培地を48時間培養して一般細菌数を計数しました=グラフ1。

グラフ1:手のひらに付着する細菌数

 外出前後で細菌数は23(CFU=菌量の単位)から186(CFU)と増加、通勤途中に細菌が手に付着していることがわかります。手洗いすることで細菌数は139(CFU)と減少しましたが、全ての細菌が除去されるわけではありません。

 手洗いには、石けんと流水による汚れの除去を目的とした「日常手洗い」と外部から付着した微生物を除菌することを目的とした「衛生的手洗い」があります。日常手洗いを研究員5名で実施し、手のひらの細菌数を測りました。手のひらを普通寒天培地に圧着し、除菌表示のあるハンドソープで40秒間手をしっかり洗い、30秒間流水で泡を流して拭いた後、再び寒天培地に手のひらを圧着して細菌数を測定しました。結果、2名は洗浄後の方が細菌数が多く、他3名も細菌はまだ残った状態でした=グラフ2。日常手洗いでは、汚れは除去できても、目に見えない細菌を完全に除去することは難しいと判ります。

グラフ2:日常手洗いによる細菌数の変化

 日常手洗いは汚れと外部からの付着微生物(の一部)を落して、正常な範囲に状態を保つことです。帰宅時、食事前、掃除後などに毎回手洗いを実施する、時間をかけて指先もしっかり洗う、水分をよく拭き取って乾燥させるなど基本的なことを常に実施すれば、目的は達成できるでしょう。

 また爪の間には多くの細菌が存在しており、手洗いすることで爪の外に出てきます。これが、日常手洗いの実験で細菌数が洗浄後に増加してしまった原因として考えられます。家庭で衛生的手洗いにできるだけ近づけるためには、爪ブラシを用いて爪先をしっかり洗うこと、1回だけではなく2回洗うこと、さらに洗った後にアルコール消毒をすることでより殺菌効果があがります。

(2014.01.10)

産経新聞掲載記事『比べる×調べる』

 

環境科学研究室