自粛要請 居酒屋で解決できることとは

キリンビール

新型コロナは世界を劇的に変えた。衝撃は大きく、コロナ前に戻る意思さえ吹き飛ばした。逆にそれは、「新たな扉」が開いたことでもある。会社はどう生き抜いていくのか。その「カタチ」を模索してみる。

産業経済新聞社・夕刊フジ
コーナー 「コロナが変えた会社のカタチ」
取材先 キリンビール 広域販売推進第1支社営業1部部長代理
小鮒直人氏
新聞発行日 2021年3月18日(木)

夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ

【プロフィール】
こぶな・なおと
2007年慶大卒、キリンビール(現キリンホールディングス)入社。1年目はマーチャンダイザーとして、福岡市内の量販店を定期的に訪問。08年鹿児島支店に赴任し、鹿児島市内、屋久島、種子島などを担当。10年福岡支店、14年から現職。量販店や外食チェーンの現状を、「グループ内でも最もよく把握している」との評判。36歳。

【キリンビール】
キリンビールの前身、ジャパン・ブルワリー・カンパニーが渋沢栄一氏や三菱の岩崎弥太郎氏らにより1885年設立。社名は麒麟麦酒、キリンビール、キリンと変遷し、2019年キリンホールディングスに吸収合併、子会社となる。キリングループは「酒類メーカーの責任」として、アルコール関連問題の解決に取り組み、次世代にお酒の文化を継承していく。代表取締役社長/布施孝之。


夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ
クラフトビールディスペンサー「タップ・マルシェ」

 外食業界は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う夜間外出自粛や営業時間の短縮要請などで大きな打撃を受けている。
 大手外食チェーンも、閉店や業態変更が余儀なくされている。こうした事態は農家や漁業者など飲食店取引先にも深刻な状況をもたらしており、1月の緊急事態宣言再発令では、取引先にも給付金が支給された。

 大打撃を受けているのはビール業界も同様で、居酒屋でのビールの需要は激減している。こうした中、好調なのが国内ビールメーカー大手のキリンビールだ。
 要因のひとつは、できたてのクラフトビールを楽しめる店舗を開業。飲食店向けに「タップ・マルシェ」というクラフトビールディスペンサーを2018年に開発し、市場を盛り上げている。20年には6000台以上を飲食店に新規参入。クラフトビールの普及・拡大と「タップ・マルシェ」の功績が評価され、「外食アワード2019」も受賞した。

 外食の機会が激減した消費者が求めているのは、おいしい食事と、それにマッチした味わい、香りのクラフトビールを飲むことだという。
 「ビールも食事に合わせて変えることが大切」と言うのは、広域販売推進第1支社営業1部部長代理の小鮒直人さん=顔写真。
 現在の担当は、「白木屋」「魚民」「笑笑」「山内農場」などの居酒屋を経営する、外食チェーン最大手のモンテローザグループの営業で、基本業務は各店舗の本部に出向き、自社商品を扱ってもらうことだ。しかし、小鮒さんは、「現場にヒントがある」「自分の目で顧客の動きを確かめたい」と各店舗の責任者やスタッフと今はオンラインで、顧客の立場で店舗側が気付いていなかった点の提案など、さまざまなサポートをしている。
 業績が落ち込んでいた店舗には、誰もが飲みやすいクラフトビールや「タップ・マルシェ」の導入を勧め、顧客の満足度アップを第一に、来客数の回復に結びつくよう提案した。

 昨年、居酒屋「山内農場」では、飲み放題付き「リモート宴会コース」を始め、顧客の間で好評だ。
 自宅にいる人と宴会ができ、山内農場の別店舗にいる人と同じ「リモート宴会コース」を食べながらZ00M飲みをすることができる。開始と終了時間が決まっているため、後腐れなく開催できるのがメリットだ。
 フリーWi-Fiや電源、B0Xなどは希望により用意。パソコンやタブレットなどの貸し出しは行っていない。
 「5人以上の会食は避けてほしい」という自粛要請が出された時、「居酒屋で解決できることは何だろう」とスタッフと何度も情報交換した結果、誕生した。

 出社率は3割までとしているが、重要な会議の時以外は直行直帰が多い。シェアオフィスも、上司や部員への連絡、営業先との打ち合わせに活用している。
 入社以来13年間、自分の目で現場を見てきた。今、飲食店はどこも厳しい状況だが、「一緒に前に進み、外食産業を守っていきたい」と言い切る。


(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子 2021.4.30 掲載)

【やまもと・ひろこ】
早大卒。40年以上にわたり、企業や自治体、大学の危機管理と広報活動について取材。コンサルティング活動も行ってきた。取材件数は延べ2000社以上にのぼる。経営情報学修士(MBA)

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