新社屋にできた他部門と交流する場

三井物産

新型コロナは世界を劇的に変えた。衝撃は大きく、コロナ前に戻る意思さえ吹き飛ばした。逆にそれは、「新たな扉」が開いたことでもある。会社はどう生き抜いていくのか。その「カタチ」を模索してみる。

産業経済新聞社・夕刊フジ
コーナー 「コロナが変えた会社のカタチ」
取材先 三井物産 セキュアディレクション取締役副社長 鈴木大山氏
新聞発行日 2020年11月26日(木)

夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ
三井物産セキュアディレクション取締役副社長、
前三井物産人事総務部Work-X室長 鈴木大山氏

【プロフィール】
すずき・だいせん
1995年早大卒、三井物産入社。情報産業本部に配属。英ロンドン、米シリコンバレー駐在。カーシェアリング・ジャパン代表取締役社長。その後、本社経営企画部時代に「Work-X」プロジェクトを立ち上げ、2018年同室長。20年11月三井物産セキュアディレクション取締役副社長。一貫してICT関連事業に携わってきた。48歳。

【三井物産】
日本初の総合商社。鉄鉱石、原油の生産権益量は商社の中でも群を抜いている。2020年6月、新本社が稼働。各メディアを通じて、メッセージ「新しい三井物産、はじまる。」とともに新しい経営理念「世界中の未来をつくる」を発信。代表取締役社長/安永竜夫。


夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ
キャンプエリアで打ち合わせする社員ら

 三井物産は6月、東京・大手町の旧本社跡地の新本社を本格稼働した。
 それに先駆け2018年、10人弱で結成されたタスクフォースで、新しい働き方を検討する「Work-X」(ワークプレイス・エクスペリエンス、職場体験の略)プロジェクトを立ち上げた。
 「新社屋への移転は変化のチャンス。どんな職場体験をするかが新しい働き方のキーになる」
 人事総務部Work-X室新設と同時に、室長に就任した鈴木大山氏はそう説明する。

 総合商社は、縦割り組織で部門の意識が強く、他部門の社員との交流は限定的。しかし、新たな価値観や技術が瞬く間に広がり、そのスピードが加速化している今、縦割りの弊害を取り除き、柔軟に対応できる態勢が求められている。また、30年に向けた長期ビジョン「強い『個』がビジネスをつくる三井物産へ」では、個々の社員が力を高め、社内外のパートナーと新しい価値を作ることを目指している。
 新しいオフィスは、社員同士の触れ合いや外部との交流の場を多くした。「ちょっとした会話からコラボレーションが生まれ、新たな価値創造につなげたいと思った」(鈴木氏)。

 では、オフィスはどう変わったのか。
 新本社は固定電話を廃止し、約4500人の社員を対象に、グループアドレス(部門)ごとのエリアを決めた中でのフリーアドレス制を導入した。「スタジオ」と呼ぶこの執務エリアには、全社員の約7割の席しかない。旧本社で調査した着席率は全社平均で約5割しかなく、「もったいない」と判断した。残り約3割のエリアは「キャンプ」と称し、社員同士や来客との打ち合わせ、執務に使われている。

 キャンプは、オープンな雰囲気で自由闊達(かったつ)に意見交換を行う場「ソーシャル」、プロジェクト単位での小規模の議論をする場「コワーク」、思考を深め、静かに戦略やアイデアを練る場「フォーカス」、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進する専門人材が集う場「ディースペース」から成る。
 ディースペースをキャンプの1つとしたことで、「DXを推進する社員と意見交換する社員の姿が多くなった」と鈴木氏。

 各フロアは、中央の「キャンプ」を、左右に分かれた「スタジオ」が挟む格好になる。圧巻は、16階から28階を結ぶ13階分の内階段だ。オフィスの階段とは程遠い、おしゃれな仕様だ。他部門の社員と顔を合わせる機会も多くなり、すれ違いざま声をかけ合い、活力の源にもなっている。

 現在、出社またはテレワークの判断は部署単位で行っており、業務に応じて上手く使い分けられるようになってきている。
 ここまで変革をスムーズに推進できたことについて、「安永竜夫社長をはじめとする経営メンバーの支援があったからこそ」と話す。
 「キャンプ」で久しぶりに会った同期の仲間とプライベートの話から仕事の話に発展したり、社員の同様の光景を目にする時は「組織を超えたコラボレーションが起きている」と手応えを感じると言う。


(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子 2020.12.18 更新)

【やまもと・ひろこ】
早大卒。40年以上にわたり、企業や自治体、大学の危機管理と広報活動について取材。コンサルティング活動も行ってきた。取材件数は延べ2000社以上にのぼる。経営情報学修士(MBA)

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