環境で変わる仕事の意欲

パソナグループ(下)

新型コロナは世界を劇的に変えた。衝撃は大きく、コロナ前に戻る意思さえ吹き飛ばした。逆にそれは、「新たな扉」が開いたことでもある。会社はどう生き抜いていくのか。その「カタチ」を模索してみる。

産業経済新聞社・夕刊フジ
コーナー 「コロナが変えた会社のカタチ」
取材先 パソナグループ 副社長執行役員 渡辺 尚氏
新聞発行日 2020年10月29日(木)

夕刊フジ掲載記事・コロナが変えた会社のカタチ
兵庫・淡路島のオフィスで執務する渡辺尚氏。窓際の海がまぶしい

【プロフィール】
わたなべ・たかし
1989年、専修大卒、テンポラリーセンター(現パソナグループ)入社。再就職支援・人材紹介事業を核とするパソナキャリア(現パソナ)代表取締役社長などを経て、2018年から現職。読書家で、社内で定期的に「読書会」を開催。55歳。

【パソナグループ】
1976年の創業以来、企業理念「社会の問題点を解決する」のもと、だれもが自由に好きな仕事を選択、働く機会を得られることを目指し、さまざまな社会インフラを構築。2003年、業界で初めて東証一部上場。国内外に67の子会社を展開。代表取締役グループ代表/南部靖之。


「淡路島の地域活性化の一助になれば」

 「淡路島の自宅から朝日が、オフィスからは夕日が眺められるんですよ」
 こう語るのは本社移転プロジェクト本部長で副社長執行役員の渡辺尚氏。都会のサラリーマンには、何とも羨ましい限りだ。

 就業開始は、東京・大手町本社は9時。淡路島オフィスは、島内の同社各施設の就業終了時間の関係で9時半から。朝礼では毎回、パソナグループの綱領「我々は『社会の問題点を解決する』を企業理念に、ソーシャルアクティビストとして社会貢献、文化創造、社会福祉の三つの事業を使命とする」を確認し合い、役員や管理職が交代でスピーチする。この朝礼には毎回参加。
 渡辺氏の淡路島での一日を紹介したい。

 朝礼後、午前中は、クライアント企業の人事担当役員らとのアポイントをはじめ、社内の役員や管理職との会議、打ち合わせが分刻みに続く。オンラインでのミーティングもあれば、リアルな会議もある。「コロナをきっかけに今後は、二つを組み合わせたハイブリッドでの対応が定着していくでしょう」
 ランチタイムは社員との貴重なコミュニケーションの場だ。同社は地方創生を目的に、淡路島内外から多くの人に訪れてほしいと島内随所に、レストランやカフェを展開。オフィスから歩いて5分でさまざまな食事を楽しめる環境にある。社員に声をかけて、日々のざっくばらんな会話を楽しむ。

 午後も、社内外との打ち合わせがひっきりなしだ。9月に、「本社機能を淡路島の拠点に分散」というニュースが報道されて以来、各企業からのオフィスの見学依頼もグンと増え、渡辺氏を中心に対応。あっという間に時間が流れていく。
 仕事を終えるのは午後7時近く。現在、東京に家族を残し単身赴任しているため、「夕食も社員と一緒に出かけます。淡路島に来て、社内の輪を大切にするようになりました」。

 10月19月から開催した同社主催のオンラインセミナー「事業創造フォーラム」は、講師を東京本社や淡路島に招き、「コロナ禍がもたらす『社会のあり方』改革」などをテーマに、各企業の代表者や人事担当者ら参加希望者約1000人を対象に開いた。「日ごろお世話になっている講師のアテンドなどもあり、この1週間は東京勤務でした」。

 渡辺氏は学生時代から、人材派遣の仕組みに関心を持っていた。なぜならば、北海道白老町の出身で、夕張炭鉱の閉山や室蘭製造所の閉鎖などで、働く場を失った人の家族を身近に見てきたからだ。
 「何とか中高年の再就職先が見つかる方法はないものだろうか」、そんな思いがパソナグループの入社につながった。

 日本人の働き方は今後、どう変わっていくのだろうか。「ワ―ケーション」や、「サテライトオフィス」での仕事の進め方がますます増えていくという。
 「どちらも環境を変えることで仕事の意欲も質も変わってきます。私自身そうなのですが、自宅で仕事をしていてもあまりはかどりません」
 
   パソナグループは今後、淡路島にさまざまな企業の社員に自由に活用してもらえる「サテライトオフィス」を設置していく計画だ。それが淡路島の地域活性化と日本人の働き方改革の一助になれば」と渡辺氏は言葉を結んだ。  


(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子 2020.11.11 更新)

【やまもと・ひろこ】
早大卒。40年以上にわたり、企業や自治体、大学の危機管理と広報活動について取材。コンサルティング活動も行ってきた。取材件数は延べ2000社以上にのぼる。経営情報学修士(MBA)