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花王
毛髪着色料「PAF 1-day hair tint」

2020.01.06

最新記事“手軽な仮装”若い女性の非日常を演出

 一部のマニアの間で始まった漫画やアニメの登場人物に扮するコスプレは、今や世界中にファン層が広がっている。またハロウィーンなどのイベントでは、髪を染めるなどの仮装を楽しむ若者も増えている。今回の「これは優れモノ」は髪の毛の着色料を取材した。

PAF 1-day hair tint

実用とは真逆の発想で

 「売り上げ規模を追うのではなく、ニッチでも熱狂的なファンになってもらえるような商品・事業づくりを目指しています」と語るのは花王新規事業部のブランドマネージャー、吉田秀和さん(51)。入社以来、おむつなどの衛生用品・日用品の販売・事業部門でキャリアを積んできた。
  花王のルーツは1887年に始めた洋小間物商に遡る。文明開化の明治期にあって、西洋からの化粧品や日用品などの雑貨を扱っていた。創業から3年後には「花王石鹸」を発売し、以来、日々の生活に欠かせない洗剤やシャンプーなど実用商品を次々と生み出していった。こうした人々の生活に根ざした製品作りは、いわば花王の本流ともいえる事業だ。
 その本流でキャリアを積んできた吉田さんに下されたミッションは、マス事業とは異なる新たな事業提案だった。
 「これまでとは真逆の発想が必要になりました」(吉田さん)。誰にでも便利で役立つものではなく、「誰が使うの?」と思われるようなユニークで斬新な価値提案にチャレンジしたという。
 食品からペット用品まで扱う同社は国内外に研究拠点を持ってい。研究分野も植物、微生物から脳、神経、皮膚、毛髪など幅広い。
 同社のヘアケア研究所では、シャンプーや髪のスタイリング剤などを生み出してきたが、2015年からこれまでにない毛髪関連の商品開発を始めていた。
 この研究をリードしてきたのは、ヘアケア研究所の楯義正さん(41)。「最近の若い女性は、スタイリング剤の使用頻度が減っているようです」と新商品の研究開発の背景を説明する。

雨に強く洗い流し簡単

 ある日、チームの若手女性研究員が1日だけのヘアカラーを提案した。仕事や学校の都合で髪色を変えられない若い女性の間で、季節のイベントなどの特別な日だけ髪を染めるのが人気だというのだ。そのための他社商品は出回っていたが、差別化による新開発が可能と判断した。
 4年近くかけて、場所を選ばず簡単に染められて、雨に濡れても色落ちしにくいのに、シャンプーでは洗い流せるという「優れモノ」の毛髪着色料を完成させた。ただ、楯さんによると、商品のプロトタイプはできたが、どのように事業家すればよいかが分からなかったという。
  花王では各研究所が社内で技術や商材の出来をアピールする場を設けている。ここで、楯さんらが開発した新商品がユニークな商品を探す吉田さんの目に留まった。昨年10月末から「PAF 1-day hair tint(パフ ワンデーヘアティント)」と名付け、Eコマースを中心に販売を始めたところSNSで話題になった。
 「花王ではかつてなkったことですが、パーティーグッズの人気ランキングで1位となるほどです」と吉田さんは確かな手応えを語った。

interview 花王 新規事業部ブランドマネージャー
吉田 秀和 氏

新たなテクノロジーで生活を楽しむ

花王らしくない商品だ

 当社では、既存の商品群にはない新たな価値の提供を目指し、2018年に「ファンテック ラボ&ビズ」という新規事業プロジェクトを立ち上げた。新たなテクノロジーで、生活に便利なだけではなく”楽しむ”ための商品を生み出していこうということだ。

マーケットニーズをどう分析した

 スポーツ観戦、コンサートなど国内のイベント市場は16兆円にも上ると試算されている。昨今、リアルな体験を求める傾向が強くなっており、今後もこの市場はまだ伸びると思われる。こうしたイベントに参加しているのは、10~30代の女性が中心だ。日常とは異なる非日常の体験を求める層に、普段とは違う自分を演出する手段として、髪の毛を着色する提案は面白いと思った。実際、若い女性の間で、一時的に毛先だけを染めるのが人気になっていた。

ブランド名の「PAF」の意味は

 「Play At Your Field」の略。それぞれの好きなフィールドで自由に楽しんでほしいといった意味合いだ。当社の商品は、日常生活を快適にする提案が多いが、今回の商品では、非日常を思いっきり楽しもうという提案をしている。

新技術を用いている

 シートに毛束を挟んで滑らせるだけで、誰でも簡単にきれいに髪が染められる。毛束を挟む力の強弱で染め具合が変わらず、均一に塗れるように顔料を染み込ませている不織布の機能や構造を工夫した。さらに汗や水にぬれても色落ちしにくい処方。全5色のカラーバリエーションだ。これまでにない商品だったため、工場での生産体制から整えるなど苦労した。Eコマース中心で展開したが、SNSで話題になったこともあり、販売は好調だ。 大学の学園祭へのブース出展やファッションブランドとのコラボレーションなど、若年層に向けたマーケティングを強化していきたい。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ